チョコレートほど、膨大なバリエーションを誇り、古くから世界中の人々を魅了している食品も珍しいのではないでしょうか。コンビニエンスストアのお菓子売り場に行くと、ほとんど毎日といっていいほど、美しいパッケージに入った新製品のチョコが並んでいます。
甘いものが大好きな子供たちばかりでなく、当サイト読者のみなさんの中にも、デスクの引き出しや通勤バッグの中にチョコが入っている人は多いのではないでしょうか。そういう筆者も、新製品を見るとつい手に取ってしまい、気がつくと引き出しの中がチョコのパッケージでいっぱいになっています。
バレンタインデーにチョコを贈るのは向精神作用狙い?
紀元前から、古代メキシコでは食品としてのチョコが知られていました。15世紀のアステカ王国では、チョコは不老長寿の薬とされ、皇帝は毎日数十杯ものチョコを飲んでいたといわれています。
カカオの木を最初に栽培したのも、彼らの祖先のマヤ族でした。この時代のチョコは、すりつぶしたカカオ豆に香辛料が加えられたもので、皇帝など一部の支配層だけが飲める高級な飲み物だったようです。やがて、ヨーロッパにチョコ飲料が広まりましたが、当時は「欲情を呼び起こす危険な飲み物」と考えられ、ヨーロッパの王族は婚約の際の贈り物としていました。
また、近年の分析で、チョコにはフェネチルアミンという化学物質が含まれていることがわかりました。
フェネチルアミンは「恋愛化学物質」とも呼ばれるもので、人が性的に刺激された時に脳内で分泌され、それをきっかけに心拍数と血圧が上昇します。ただし、食品から摂取されたフェネチルアミンは「血液脳関門」と呼ばれる仕組みによって脳への進入をブロックされてしまうため、チョコを食べることによって脳内のフェネチルアミンを増やすことはできません。
とはいえ、バレンタインデーにチョコを贈る習慣が始まった20世紀前半は、まだチョコに「恋愛化学物質」が含まれていることは発見されていなかったことを考えると、この不思議な関連性には驚かされます。
日本のバレンタインデー定着は70年代?
ふと思い立ち、歳時記におけるバレンタインデーの登場を調べてみました。歳時記とは、俳諧で季語を分類して解説や例句をつけた書物のことです。俳人・高橋悦男氏の研究によると、歳時記にバレンタインデーを詠った俳句が例句として初めて収載されたのは1971年のようです。