豆類は世界中でさまざまな品種が食用にされており、イネ科の植物に次いで価値の高い食用植物です。多くの品種において、米や小麦の2~3倍のたんぱく質を含んでいます。
その理由は、豆科の植物は土壌中の根粒菌と総称される微生物との共生系が進化しており、微生物が豆科植物の根のなかにすみ着いて、土壌のすき間の空気から窒素を取り込み、植物細胞のたんぱく質合成系に供給するからです。それによって、豆科植物は、ほかの植物よりも有利にたんぱく質合成を行うことができます。
さて、これから暑さが本番になり、冷たい飲料を注文する機会も増えてくるものと思います。1日の勤めを終えて店に立ち寄り、冷えたグラスに注がれたビールでのどを潤す瞬間は格別ですが、やはり、何かアテがほしくなるもの。
もちろん、皿に美しく盛られた料理は1日の疲れを癒やし、食欲も満たしてくれますが、多くの人は、まず「すぐに出てくるものは何かな」とメニューを見るはずです。その時の定番料理のひとつが、枝豆ではないでしょうか。
枝豆は品種としては大豆そのもので、未成熟の段階で収穫したものを特に「枝豆」と呼びます。枝豆は品種名ではなく、古くから枝ごとゆでて調理されることが多かったため、通称としてそう呼ばれているのです。
ヨーロッパで「豆」といえば、エンドウやソラマメが代表的な品種ですが、日本を含む東アジアからインドにかけては、大豆が中心品種です。中国北部で3000年以上前に栽培が始まり、仏教の菜食主義とセットになって、肉を代替するたんぱく源としてアジア全域に広がっていきました。
日本では枝豆がなければ懇親会が始まらないほどですが、西洋ではその地位は低く、大豆が西洋に伝わったのは、わずか百数十年前のこと。枝豆に至っては、食用になったのは、ここ十数年のことです。英語圏ではそのまま「edamame」と呼ばれ、日本におけるフライドポテト的な添え物あるいは街角で気軽に食べられるおやつとしての地位を築き始め、来日した外国人観光客が東京の繁華街の飲食店でせっせと枝豆を口に運んでいる姿も珍しくなくなってきました。
欧米人にとっては、豆を皮からポイポイと飛び出させながら食べる食べ方がとても斬新に感じられるそうです。まさにその様子を、正岡子規は明治34年にこう詠んでいます。
「枝豆や 三寸飛んで 口に入る」
季語としての枝豆は、立秋以降、つまり現在のカレンダーでいえば8月以降で、まさにこれからがシーズンといえます。もともと、北米では大豆が大量に栽培されていましたが、煮ることによって欧米人の好まないにおいが発生することとペースト用途に向いていないことから、ほとんどが家畜飼料あるいは調理油採取用です。