イチゴ狩りの本格シーズンになりました。人気ブランド「とちおとめ」の産地、栃木県各地の観光農園にも、土日祝日などは多くの観光客が訪れています。どこの農園も、ハウスでとちおとめの摘み取りが楽しめます。入園料は30分食べ放題で、中学生以上は1500円、小学生1300円、3歳以上小学生未満は850円というのが相場です(季節によって変動します)。
観光客で目立つのは子どものいる家族連れで、子どもたちが歓声をあげてイチゴを夢中で摘んで食べている姿をよく見かけます。しかし、イチゴを洗って食べている子は皆無です。お母さんお父さんは、農薬のことは気にならないのでしょうか。イチゴはほかの果実と違い、皮をむかずそのまま食べます。しかも、果実の表面がぶつぶつになっているので、そこに農薬が残留しやすいのです。
イチゴに多く使われる農薬は、「灰色かび病」や「うどんこ病」対策のものが多いのですが、すでに多くの耐性菌が出現しているため、既存の農薬の効果が薄くなっており、何度も繰り返し使用されたり、新しい農薬が続々と投入されています。そのなかには、人への薬害が非常に心配される農薬もあります。
特に、灰カビ病対策に使われている「クリーンアップ」という農薬は銅剤が加えられていますので、銅による薬害が問題視されています。酸化銅について、「経口摂取後に腎臓、肝臓に影響を与えることがある。これらの影響は遅れて現れることがある」(国際化学物質安全カード)との指摘があります。
クリーンアップは、生物農薬(バチルス属細菌)の補完剤として使われています。灰カビ病は、低温多湿という環境下で発生します。防湿ファンが設置され、常にハウス内を乾燥状態に保っているハウスでは発生しません。したがって、イチゴ狩りをする際は、ハウスに防湿ファンが正常に稼働しているか確認することが重要です。防湿ファンが設置されていない観光農園であれば、農薬がかなり使用されていると考えられるため、そのイチゴを食べるべきではありません。
また、ハウス栽培のイチゴでは、生長ホルモン剤を使用している場合があります。ホルモン剤を水で希釈してイチゴに与えると生長が格段に早まります。通常、市場に出荷される野菜・果実では、収穫の3日前までに使用を終えますが、観光農園の場合、かなりルーズに使用されているとの情報があります。
イチゴ狩りに行くときは、当該観光農園がインターネットで害虫の防除記録を公開しているか確認することをお勧めします。情報が公開されていれば、子どもたちにも安心してイチゴをほおばらせることができます。逆に、防除記録が公開されていない場合、必ず水洗いをしてから食べるべきです。そのために、水を入れた大きなペットボトルは必ず持参してください。
(文=郡司和夫/食品ジャーナリスト)