先日、通勤電車の中吊り広告で「トクホの大嘘」という週刊誌の見出しを目にしました。トクホ(特定保健用食品)は本当に効果がないのでしょうか?
いきなりですが、結論から言えば、効果はあります。
なお、筆者はこの週刊誌記事が虚偽・捏造だと糾弾したいわけではありません。また、トクホを製造・販売している企業のちょうちん持ちをしているわけでもありません。「効果がある」と断言しましたが、その言葉の意味について正確に理解をしておく必要があります。今回は、「トクホに効果はある」の真の意味について考えてみます。
トクホの有効性:検証方法は医薬品と同じ!
製造・販売しようとするトクホ製品に「効果がある」ということを立証するためには、ランダム化比較試験によって有効性を検証することが求められます。これは、医薬品の効果を立証する方法と同じです。
トクホのランダム化比較試験を図にすると次のようになります。
補足すると、試験食品は製造・販売しようとするトクホ製品と同じものを用いる必要があります。また、比較として対照製品を摂取してもらう必要があり、これは見た目や味などは同じでも関与成分(=効果を発揮する有効成分)が含まれていない食品、いわゆるプラセボになります。
たとえば、脂質代謝に関わる総コレステロール値に対して、トクホがどのように影響するのかを調べるランダム化比較試験では、下の図に示すような結果が得られています。
「*」のマークが付いている箇所が試験食品(トクホ)と対照食品(プラセボ)との間に統計的に差が確認された、つまりトクホの効果が立証されたということになります。
グラフを見て気がついた人がいるかもしれませんが、プラセボを摂取している群でも総コレステロール値が低下しています。一般的に、このような臨床試験をおこなうと、参加者は「臨床試験に参加している」という意識から食生活や運動習慣に気を配ったりしてしまい、その結果、プラセボ群であっても総コレステロール値などの検査値が改善することがあります。これを専門用語でホーソン効果といいます。また、皆さんもご存じかと思われるプラセボ効果も無視できません。そのため、重要になってくるのが、試験食品(トクホ)と対照食品(プラセボ)との差、つまりトクホにプラセボを上回るような効果があるのかどうかになってきます。
消費者庁がトクホとして許可するためには、その製品を用いたランダム化比較試験によって有効性が立証されなければなりません。ですから、世の中に流通しているトクホは、原則としてランダム化比較試験によって効果があることが証明されていることになります(「原則として」と書いたのは、トクホの制度が始まった当初は厳密にランダム化比較試験が義務づけられていなかったためです)。