急速な高齢化とともに、年々がんの患者数が増え続けている日本――。2014年度の厚生労働省の統計によると、1年間に新たに診断されるがん患者数は約86万人、1年間のがんによる死亡数は約37万人だ。
その一方で、治療法の進歩により、がんの診断を受けてから5年以上生存している人も増えている。現在、治療中のがん患者総数は約160万人。さらに、がん治療をひとまず終えた人、いわゆる「がんサバイバー」は、500万人を超えると推定される。
「二次がん」=再発ではない新たながん
がんサバイバーにとっては、短期的には再発予防が目標になるが、長期的には、がん治療の後遺症として発症する「二次がん」の予防が重要だ。
二次がんとは、がん経験者に起こる「再発ではない新たながん」のこと。その発症には、抗がん剤や放射線などが影響すると考えられている。
近年、がんの生存率が上がり、生存期間も延長しているが、それとともに二次がんの頻度も高くなることが、長期的な疫学的調査により明らかになっている。
さらに、二次がんそのものが、がん患者の予後を大きく左右することもわかってきた。特に患者の年齢が若いほど、その影響が大きいという。
子どもの二次がんの生存率は半分以下
4月20日付『JAMA Oncology』(オンライン版)に掲載された米カリフォルニア大学の研究によると、「若年者」が二次がんになった場合、「中高年」と比べて死亡率が大幅に高まるという。
また、ほとんどのがん種では、二次がんのほうが最初のがんに比べて生存率が低いことも判明した。特に患者が「40歳未満」の場合は、この傾向が顕著だった。
今回の研究では、アメリカで1992~2008年の間にがんと診断され、2013年以降まで追跡されたがん患者100万人以上を対象とした。
解析の結果、「15歳未満の子ども」「40歳未満の若年者」の「一次がん」の5年生存率は80%。それに対して「二次がん」を発生した場合の5年生存率は、「子ども」では47%と一気に下がり、「若年者」でも60%へと低下することがわかった。
一方、「40歳以上の中高年者」では、「一次がん」の5年生存率は70%だが、「二次がん」の5年生存率は61%と、若年者に比べて下げ幅が少なかった。
若年者で特に多い14種類のがんに着目すると、そのうち12種類では一次がんであるか二次がんであるかによって、5年生存率に有意な差がみられた。
たとえば、若年者の急性骨髄性白血病の5年生存率は、「一次がんの場合は57%」 であったが、「二次がんの場合はわずか29%」。乳がんの5年生存率は「一次がんの場合は81%」だが、「二次がんでは63%」にまで下がる。
なぜ中高年者よりも若年者の方が二次がんの予後が悪くなるのか――その理由はよくわかっていない。が、研究グループはいくつかの理由を推測している。