気温が高くなってきて、カビや細菌が繁殖しやすい季節となり、室内のカビ臭や衣類の汗臭さなどが気になっている人も多いと思います。そこで、ドラッグストアなどで除菌・消臭スプレーを購入し、カーテンやソファ、衣類などにシュッ、シュッと吹きかけている人もいるでしょう。
しかし、これらの製品はけっこう値段が高いですし、安全性の面でも不安な点があります。実は、それらを買わなくても、嫌なにおいを取る方法があるのです。
市販の除菌・消臭スプレーに使われている成分は、第四級アンモニウム塩系の殺菌剤です。これは、いわゆる逆性せっけんの成分です。普通のせっけん、すなわち脂肪酸ナトリウムは、水に溶けるとイオン化してマイナスの電気を帯びます。ところが、逆性せっけんは、水に溶けるとプラスの電気を帯びます。つまり、せっけんとは「逆」ということで、逆性せっけんといわれているのです。
一般に細菌は、その表面がマイナスの電気を帯びています。逆性せっけんはプラスなので、細菌の表面に速やかに結合することができます。そして、細胞膜を破壊したり、細胞膜の酵素の働きを失わせたり、あるいはたんぱく質を変性させるなどして細菌を殺すのです。
嫌なにおいは、細菌が脂肪やたんぱく質などを分解することによって発生します。除菌・消臭スプレーを衣類やソファなどに噴射すると、第四級アンモニウム塩系殺菌剤が細菌を駆除するため、嫌なにおいもしなくなるというわけです。
第四級アンモニウム塩には、いくつか種類がありますが、代表的なのが塩化ベンザルコニウムです。これは病院で消毒薬として使われているほか、洗浄液、化粧品、脱臭剤、清浄綿など、さまざまな製品に使われています。
しかし、殺菌力が強いだけに人間に対する毒性も強く、誤飲すると嘔吐、下痢、筋肉の麻痺、中枢神経の抑制などの中毒症状を起こします。また、0.1%以上の水溶液は眼を腐食します。それどころか、1%以上は粘膜を、5%以上は皮膚を腐食します。そのため、皮膚に付着すると、発疹やかゆみなどの過敏症状が現れることがあります。