歌舞伎役者の中村獅童が5月18日、自身が肺腺がんであることを告白した。
「病に打ち克ち、必ず元気になって今まで以上に良い舞台がつとめられますよう、より一層精進いたし、また皆様にお目にかかりたいと思っております。そのために、今しばらくお時間をください」
彼が発したこのメッセージからは病気と闘う強い意志が垣間みえるが、肺腺がんを告知された時の落胆は大きなものだったろう。また、このニュースの与えた衝撃は、歌舞伎界だけでなく世間でも大きなものだった。肺腺がんを含む肺がんの罹患率は増加傾向にあり、2014年には男性の肺がん罹患率は胃がんを抜いて1位だった。多くのがんは初期段階での自覚症状が乏しいが、それは肺がんも同様である。
桶川みらいクリニック院長の岡本宗史医師は、「肺がん全体でみると、統計的には40代後半からの罹患率が高い傾向にあり、特に喫煙者やリスクの高い方は、無症候でも定期的な検査を行うことで早期発見につながる可能性がある」と言う。同クリニックは、地域住民からの信頼が厚く、1 日に100 名以上の患者が訪れる。禁煙の重要さと同時に、肺がんに対する認識や定期的な検診の重要性を呼びかけている。
肺腺がんとは
肺がんには、大きく分けて小細胞肺がんと非小細胞肺がんの2 種類がある。小細胞肺がんは、進行が速く手術適応にならないケースが多いが、放射線療法、化学療法への反応が良いといわれている。一方、中村獅童が罹患した肺腺がんは非小細胞肺がんで、進行は速いものから遅いものまで多様だ。一般的に喫煙は肺がんの危険因子となるイメージがあるが、肺腺がんは、小細胞肺がんや、もうひとつの非小細胞肺がんである扁平上皮がんに比べると、喫煙との因果関係が薄いといわれている。また、男性ばかりでなく女性の罹患率も高いのが特徴だ。自覚症状としては、呼吸器系の症状が現れる。咳や痰、血痰、胸の痛み、微熱といった症状が長期間継続する場合は要注意だが、本人は風邪だと思い込み受診が遅れるケースも少なくない。