これから先の季節、段々と湿度が高くなると共に、梅雨に入るとそれが最高潮に達し、うっとうしさも極まってくる。
梅雨時は、急激な気圧の変動に伴い、頭痛やリウマチ、古傷の痛みの悪化という「気象病」を起こしやすいばかりか、自律神経の失調もきたしやすい。その上、日照時間が少なくなるので、睡眠ホルモンといわれる「メラトニン」の脳での産生分泌が不足し、睡眠不足に陥り、ひどくなると「梅雨うつ」を患う人もいらっしゃる。
さて、自律神経は我々の意思とは関係なく、心臓、血管、胃腸、肺、肝臓、内分泌臓器などの内臓の諸器官の働きを調節している。自律神経は交感神経と副交感神経より成っており、交感神経は「昼の、緊張の、活動の、闘いの」神経といわれ、副交感神経は「夜の、リラックスの、休息の」神経といわれる。
あたかも、馬の手綱のごとく、お互いに拮抗、または協調して、内臓の諸器
官をコントロールしている。
寒いときは交感神経が働いて体熱の産生を促し、体表の血管を縮めて、熱の放散を防ぐ。逆に暑いときは副交感神経が優位に働き、体熱を体外に発散させるために体表の血管や毛穴を弛緩させる。
梅雨時は蒸し暑い日があったり、「梅雨寒」で急に寒くなったり、また暑いのでクーラーをつけたら体が冷えすぎたりと、交感神経と副交感神経の調節機能がとても狂いやすくなる。その結果、血圧の乱降下、動悸や頻脈、食欲過剰や食欲不振、便秘や下痢といった自律神経失調に陥る人がいらっしゃるわけだ。そこに、日照量の不足→メラトニンの分泌低下→不眠が加わると、梅雨うつの危険が高まる。
サウナ浴
そう簡単に、自律神経が働きを狂わせないようにするには、短期間で「暑さ」と「寒さ」の刺激を与えるようにするとよい。
一番手っ取り早い方法が、サウナ浴だ。サウナファンの人は、誰しもご経験済みの通り、
・サウナ浴=5~10分(副交感神経を刺激)
・冷水浴(手足に水をかけ徐々に体をつける)(交感神経を刺激)
・休息=5~10分(副交感神経が働く)
これを何回か繰り返した後の爽快感は、表現のしようがない。まさに筆舌に尽くしがたい。「抑うつ気分」など、文字どおり雲散霧消する。
ただし、サウナ嫌いの人やサウナへ行く時間がない人は、自宅の風呂の湯船にじっくりつかった後に、冷水シャワー(心臓から遠い手足から体の中心へ徐々に冷水をかける)をすることを繰り返されるとよい。
なお、自律神経鍛錬法としては、昔から一定した人気のある「乾布摩擦」がある。乾いたタオルか布で体表(皮膚)をゴシゴシする方法だ。体表の血液の流れがよくなり、体温が上がってくるが、そのほかにも内臓の鏡といわれる皮膚を刺激することで、末梢神経から、自律神経、中枢神経も刺激・鍛錬できるからである。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)