バラが満開に咲いている公共のバラ園に行っても、ハチ・チョウなどの昆虫が一匹も飛んでいないところが増えてきました。おそらく、殺虫剤を噴霧した結果でしょう。
公園でも、蚊などが発生しないように殺虫剤を噴霧しています。多くの家庭でも、虫が寄りつかなくなる殺虫剤を網戸に噴霧し、玄関やベランダには殺虫プレートを下げています。
結果として、ハチ・チョウ・トンボなども見かけなくなってきました。奇麗に紫陽花が咲いても、かたつむりも見かけなくなってきています。特に、ハチは植物の交配のために必要なので、「虫がいなくて良かった」と一概にはいえない状況です。
子供がせっかく、公園に虫取り網とかごを持っていっても、昆虫採集ができなくなってきています。
蚊は卵を水のあるところに産みつけて、卵は2週間くらいで蚊になります。たとえば、あき缶に雨水がたまり、その中に卵が産みつけられると、2週間後にはそこから蚊が飛び立ちます。そこで毎週、家の周りや公園などで水の溜まるところ(雨水ますなど)の清掃を行うと、薬剤に頼ることなく蚊の発生を防ぐことができます。
蚊を含めて飛翔昆虫は光・温度・臭い・二酸化炭素等を好んで集まってきます。特に光に関しては、紫外線の波長を感知して寄ってきます。昆虫の多くは人間の目に見えない300〜400nmの紫外線波長を好みます。一般の家庭で使用している蛍光灯は、昆虫の好きな波長を出しているので、窓から漏れる光に寄ってくるのです。玄関を開けたときに家の中の蛍光灯の光が見えれば、昆虫は家の中に入ってきてしまいます。照明器具の掃除をすると、小さな虫が笠の中にたまっていることがあるのも、このような習性があるからです。
そこで、玄関の外灯、窓から漏れる光などをLEDに替えると、虫が寄りつきにくくなります。LEDのなかでも、種類によっては虫が好む光を出しているタイプもあるので、購入する前には確認が必要です。
さて、このような対策をとっても部屋に入ってくる飛翔昆虫に対して、駆除するために蚊取線香、電気蚊取器、殺虫剤などを使用してしまうと、化学薬剤が部屋の中に充満してしまいます。人間には影響がない濃度でも、化学薬剤を吸入することには変わりません。
化学薬剤を避けるためには、昆虫が好む青い光によって虫を集めて捕獲するタイプの「捕虫器」がもっともオススメです。捕虫器には、昆虫を吸い込むタイプと、熱線で焼き殺すタイプがありますが、焼き殺すタイプは昆虫の焼け焦げる臭いがするのと、死骸が飛び散る可能性があるので、居住場所にはなじみません。
昆虫を殺すことができる薬剤を公園にまきすぎることは、有用なハチなども殺してしまい、また室内にまけば薬剤が充満して人間が吸ってしまうことを忘れてはならないと思います。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)