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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

新型コロナ、収束にはワクチン接種が最重要…安全性・効果・副作用は?変異種にも対応可能?

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
新型コロナ、収束にはワクチン接種が最重要…安全性・効果・副作用は?変異種にも対応可能?の画像1
「Getty Images」より

 1月7日、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に、緊急事態宣言が発令された。さらに大阪、兵庫、京都も緊急事態宣言の発出を政府に要請。12日には、愛知と岐阜が共同で政府に同宣言の発出を要請することを決定した。新規感染報告が過去最多を記録し続ける現状に歯止めがかかることが期待されるが、緊急事態宣言には法的強制力がないため、国民がどう受け止め、どう行動するかがカギとなるだろう。

 新型コロナウイルスの現況と緊急事態宣言中に我々が取るべき行動について、慶應義塾大学医療政策・管理学教室特任助教、坂元晴香氏に話を聞いた。

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坂元晴香氏

 2020年4月にピークを迎えた第1波では、東京と地方都市を中心として全国で感染が拡大したことを受け、4月7日に最初の緊急事態宣言が発令され、新規感染者は減少傾向となり5月25日に解除された。8月にピークを迎えた第2波では、繁華街など「夜の街」での感染が目立ったことから、飲食店への休業要請などが行われ、感染は減少傾向へと向かった。現在は第3波の真っ只中、これまでとの違いはどこにあるのか。

「特に第2波と第3波の違いに関して、第3波流行当初から言われていたのは、年齢層だと思います。第2波では、ほとんどが20~30代の若い人だったのに対し、第3波は当初からすべての年齢層に満遍なく患者が発生していました。

 また、流行の中心地でしょうか。第2波は、いわゆる夜の歓楽街が中心だったのに対し、第3波は歓楽街に限らず、飲食(必ずしもお酒や接待を伴わない、昼食や職場の休憩室での食事等)が起点になっている点だと思います」(坂元氏)

 都内での新規感染者が連日2000人を超え、全国の感染者も7000人を超え、過去最多を更新している。これは“感染爆発”と捉えるべきだろうか。

「ここ数日の感染者数の増加でもわかる通り、第1波・第2波に比べて感染者数の数が桁違いです。捕捉できていない潜在的な感染者数も含めると、第1波・第2波より相当感染者数が多い状況かと思われます」

 感染爆発の様相を見せ始めた頃、「変異ウイルス」のニュースが、さらなる不安をもたらした。イギリスでは1日の死者数が1000人を超え、その原因が変異ウイルスによるものと推測された。変異ウイルスの蔓延を防ぐため、イギリスでは3回目のロックダウンが行われている。

なぜ今、変異ウイルスに注目?

 しかしながら、変異ウイルスの報告は感染拡大当初からあったが、なぜ今、変異ウイルスに注目が集まるのか。

「確かに、これまでもウイルス変異株の報告はありましたが、それらは基本的にウイルスの性状(感染力や重症化のしやすさなど)には変化を起こさないものでした。一方で、今回の変異株の報告は、ウイルスの性状そのものに変化が見られたことが問題になっています。現在言われているのは、主に感染力(感染の拡大しやすさ)が高まったということです」

 米英では1日の死者数が増加し続けており、変異ウイルスによるとの見解もある。すでに日本にも変異ウイルスに感染して帰国した人がいるとの事実から考えれば、米英と同様に、今後さらなる死亡者の増加が危惧される。

 ワクチンが登場し、集団免疫獲得への期待が高まるが、一方で副作用の報告もあり、その安全性にも不安が残る。

「すでに米英など諸外国では接種が始まっていますし、効果・安全性は高いと考えて良いと思います。他方で、日本に入ってきた際に、実際に集団免疫を獲得できるまでに相当数の国民に接種が可能なのか、そのあたりはまだなんとも言えない状況だと思います。また、ワクチンを打った場合に、その効果がどの程度持続するのか、再感染はないのか、重症化予防はできても他人に感染させないのかなど、わかっていないことも多くあります」

 菅義偉首相 は、2月中のワクチン接種開始に意欲を見せているが、ワクチンの性質、効果以外にも留意すべきことがある。

「ワクチンの管理・運用やvaccine hesitancy(ワクチン忌避)のほうが、課題としては大きいと思います」

 日本では、ファイザーの新型コロナワクチンが「特例承認」の適用により、2月中にも承認される見通しだが、ワクチンの保管はマイナス75度前後で冷凍する必要があり、運搬・保管時の超低温冷凍庫等の設備が必要となる。また、ワクチン忌避と呼ばれる、一定数存在するワクチン接種をためらう人々への啓蒙や対策も必要となるだろう。世界での新型コロナの感染状況をみても、収束させるためにはワクチン接種が最重要となる。

「重症化にリスクが高い方や、医療・介護施設等で働く人などは接種したほうが良いと思います。また、現状、特効薬がないこと、これだけの社会・経済的混乱を引き起こしている感染症であることを考えると、ハイリスクに分類されない人たちも接種したほうが良いと思います」

コロナウイルスは抑え込めるのか

 ワクチン接種開始まで、緊急事態宣言により少しでも感染拡大を抑えたいところだが、我々のとる行動が、その効果を左右することになる。

「緊急事態宣言が出ても、個人レベルでやることは変わらず、基本の徹底に尽きると思います。手洗い、手指消毒、3密空間を避ける、体調が悪い時は外出しない・人に会わない、症状がある時はマスクを着用するなど。どのような場所が感染のハイリスクな場所かわかっているわけですから、いわゆる3密とされる場所を避けつつ、東京のように感染者数が増えている地域では、これに加えて不要不急の外出はしない、極力他人との接触を避けるということなると思います」

 最後に、我々はコロナに打ち勝つことはできるかについて、坂元氏個人としての見解を聞いた。

「これはわからないですね。これまでの歴史を見ると、ウイルスが人類を駆逐するほどの感染力・毒性を持ってしまうと、ウイルスそのものが生き延びられなくなってしまうので、最終的には人類とウイルスと共存できる程度に落ち着くのではないかというのが、大方の予想だとは思います。しかし、それはあくまでも予想ですし、仮にそうなるとして、その状態になるまでどの程度の年月を要するのかはわかりません」

 イギリス首都ロンドンでは、新型ウイルス変異種が制御不能となり、医療機関が対応できない恐れがあるとして「重大インシデント」を宣言した。同様のことが、ロンドンに類似する都市、東京でも起こりうる。日本で新型ウイルス変異株が制御不能となる事態に陥るのを防ぐのは、我々であるということを強く伝えたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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