8月7日付『北海道ニュース』(北海道文化放送/UHB)において、北海道旭川市で、家族連れが夏祭りの出店で買った鶏肉料理の中から幼虫が複数匹出てきて、保健所が混入経路などの調査を行っていると報じられました。
ニュース映像を見ると、肉の中にうじ虫らしき幼虫が入り込んでいます。恐らく腐った鶏肉を使用したのではないかと思われますが、本当のところは、保健所の調査結果を待つしかないでしょう。
ところで、良質な食材を使っても、祭りや縁日の屋台に蛾などの虫が入るのは珍しくありません。夏の夜などは、屋台の明かりに虫が群がるなかで焼きそばなどをつくっているのですから、虫が入っているくらいは覚悟しないと食べられません。
筆者の娘が小学3年生の夏休み、家族で近所の縁日に行った際の出来事です。娘の友達も家族で来ていて、みんなで屋台の焼きそばを買ったところ、焼きそばに黒く焼けた蛾が入っていたのです。子どもも親も「キャー」と叫び大騒ぎでした。屋台のお兄さんに「蛾が入っていたわよ」と、母親たちがすごい剣幕で文句を言うと、代金を返してくれましたが、そのお金で子どもたちが買ってきたのはジャムパンでした。
私が「ジャムにも毛虫が入っているから食べないほうがいいよ」と言うと、皆、ビックリした顔をして、穴が開くほどジャムパンを見つめました。娘はジャムパンをふたつに割り、中を見て「お父さん、毛虫なんか入っていないよ」と、けげんな顔をしました。私が、「ジャムの赤い色を出しているのが毛虫の粉末なんだよ」と教えると、娘も友達もそのお母さんも驚き、開封していないジャムパンを買った出店に返しに行きました。
それから二十数年たちましたが、毛虫は相変わらず食品に混入しています。毛虫というのは、コチニール色素のことです。ジャムをはじめ、トマトケチャップ、清涼飲料水、冷菓、餡子類、水産練り製品などにオレンジ、赤、赤紫色を着ける食品添加物(着色料)として使用されています。毛虫の正体は真っ赤なエンジ虫のメスです。それを粉末状にしたものを年間50~60トン、中南米から輸入しています。
コチニール色素は、主成分がカルミン酸であることから別名カルミンともいい、古くから赤インキや日本画の絵具、繊維の染料、化粧品の顔料として使われていました。それが食品添加物としても使われるようになったのです。
食品添加物のコチニール色素には、カルミン酸が約15%含まれています。毒性については、遺伝子を傷つける変異原性が強いことが、細菌を使った実験で確認されています。石油を原料にしたタール系色素の食用赤色2号よりも変異原性は強いといわれています。変異原性が強い(陽性)ということは、発がん性もあるというのが化学の常識です。
なんでも食べる雑食性の人類が、エンジ虫のような毛虫を食用にしてこなかったのも、単に気持ち悪いという理由だけではなく、その毒性を数千年に及ぶ生活の知恵から会得、受け伝えられてきたからです。毛虫を食品に利用するなんて、人類への冒瀆ともいえます。
(文=郡司和夫/食品ジャーナリスト)