今日はテレビのコマーシャルの話題で始まりました。“非常識君”が言います。
「最近気に入っているコマーシャルがあります。小学校低学年の女の子が捨て犬を拾ってきて、そして一緒に大きくなって、お嫁に行くときに犬と話をして、女の子が『ちょくちょく帰ってくるから』と言うと、犬が『ときどきでいいよ』と返事をするという内容です」
“極論君”が尋ねます。
「非常識君はテレビはコマーシャルが嫌いだから見ないと、豪語していませんでしたか?」
非常識君が回答します。
「そうです。無料のテレビはコマーシャルで基本的に経営が成り立っています。ですから、報道番組やバラエティ番組など情報を発信する番組には、そんなスポンサーの意向が自然と反映されることを嫌って、テレビは見ないのです。しかし、スポンサーの意向はスポーツの結果には無関係なので、スポーツは見ます。また、視聴料を払って見るテレビは最近気に入っています。スポンサーの影響は視聴料が無料のテレビよりは少ないと思っているからです。一方でNHKは受診料を取っていますが、中立を演じながらも、微妙に政府寄りの意見が強いと思うので、そんな視点で見ています。イギリス政府に堂々といろいろな意見を投げかけるBBCとはちょっと趣が違うと思っています」
極論君が言います。
「僕はテレビの情報は、医療番組を含めて正しいと思って見ています。そんなにスポンサーの意向は情報に反映されるのでしょうか」
非常識君が答えます。
「街で配られているポケットティッシュに書いてある情報は、誰も中立だと思って見ませんよね。お金を出して発信している情報だと理解しています。無料でティッシュがもらえることの危うさを、もらうときに自然とわかっている人が多いと思います。それと同じですよ。視聴料を取らないテレビは、コマーシャル収入で成り立っているのです。ですから、スポンサーを面と向かって批判する情報はなかなか流しにくいでしょう。また、流さざるを得ないにしても、短く流すとか、反対意見を手厚くして発信するとか、いろいろとスポンサーに気を遣った情報発信が可能です。つまり、極論を言うとあまりに多くの時間テレビを見て、その情報を信じていると馬鹿になる、そして情報に洗脳されると思っているのです」
スポンサーの目に見えない圧力
そして非常識君が続けます。
「今、タバコの商品自体のコマーシャルはテレビにはありません。ですから堂々とタバコが悪いと言い放てるのです。確かにタバコは肺がんや慢性閉塞性肺疾患と相当深く関係しています。しかし、今や患者が700万人にも達し、そして境界型を含めると2000万人も罹患しているといわれている糖尿病、その原因となる甘いものはタバコほどは糾弾されません。砂糖を大量に含む清涼飲料水やお菓子類がタバコのように糾弾される光景は、あまり目にしません。そんなときに、スポンサーの目に見えない圧力を僕は感じるのです。ですから、情報発信系の番組は視聴料が無料のテレビでは見ないのです」
“常識君”がコメントします。
「そんなテレビのスポンサーは、医療業界では製薬企業でしょう。製薬企業は精一杯企業側にとって利益になる情報を医療サイドや株主に流すのです。製薬企業は基本的に株式会社ですので、利益を追求することは当然で、また株価に不利益な情報はできる限り伏せることは当然の、そして正当な行為です。そんな当たり前のことを理解して、医療サイドは情報を取捨選択する必要がありますね」
極論君が言います。
「製薬企業に敵対するような意見はなかなか日の目を見ません。そして製薬企業が利する情報は自ずと、次から次へと引用されて、広まるのです。一方で、ある薬がある臨床研究では無効であったといった情報はなかなか広まらないし、またあえて発表しないことも多いのです。そんな出版バイアスといわれる状況が存在することを知っていることが、重要なのです」
常識君の意見です。
「僕たちは良くも悪くもなんでも発言できるフェアな社会で生きています。そしてお金が回ることが大切である資本主義社会で生きています。そんな世界では、スポンサーの存在や目に見えない圧力、そして出版バイアスなどは当然存在するのです。医療情報もそんな立ち位置で、できる限り中立な立場で、また反対の意見も尊重して、しっかりと考え抜いて学ぶことが大切ですね」
(文=新見正則/医学博士、医師)