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海藻を食べると歯周病が改善する?カルシウムの取りすぎは動脈硬化や腎臓結石の恐れ

文=ヘルスプレス編集部
歯周病の改善に「海藻」が効く! 海外では<30歳からはマグネシウムを摂れ>と推奨の画像1海藻は歯周病撃退に有効な成分を含む(depositphotos.com)

 成人の8割がかかっているとされる「歯周病」。歯を失う原因になるのはもちろん、さまざまな病気を引き起こす要因にもなる。歯周病菌や菌のつくり出す毒素は、炎症を起こした歯ぐきの血管から入り込んで全身に広がり、体のあちこちで悪さを働く。

 たとえば、歯周病で歯ぐきに炎症があると、そこで「TNF-α」という物質がつくられ、血液中に増える。この物質はインスリンの働きを妨げ、血糖値の調節作用を悪くしてしまう。

 広島県歯科医師会と広島大学による共同研究では、歯周病の治療をすると「ヘモグロビンA1c」(血糖値コントロール状態を示す値)が改善すると報告されている。

 日本糖尿病学会も治療ガイドラインで「歯周病を治療すれば2型糖尿病が改善する可能性がある」と言及している。

 ほかにも、血管内に入り込んだ歯周病菌の刺激によって動脈硬化が進展することも明らかになってきた。重度の歯周病患者は脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクが高まるという研究報告もある。アルツハイマー型認知症と歯周病の関連も疑われている。

糖質とカルシウムの摂りすぎで歯周病を悪化

 そんな歯周病の改善に役立つと考えられている食品がある。それは「海藻」だ。歯周病と食生活の関連に詳しく、『名医は虫歯を削らない――虫歯も歯周病も「自然治癒力」で治す方法』(竹書房)の著書を持つ小峰歯科医院の小峰一雄院長は、その理由について次のように語る。

「日々の食生活が歯周病に及ぼす影響は大きい。重要なポイントは、糖質とカルシウムを摂りすぎないこと。マグネシウムを積極的に摂ること。マグネシウムの宝庫で、糖の吸収を妨げる食物繊維も多い海藻は、歯周病防止に有用な食品」

 糖質は口の中にいる細菌のエサになり、歯垢の元になる。歯垢を放置すると、唾液に含まれるカルシウムなどと結合し、石灰化する。これが「歯石」で、歯石がついた歯ぐきの中は菌の温床となり、歯周病がさらに進行していく。

 また、糖質を摂りすぎると、余った糖質がレプチンというホルモンによって脂肪細胞に蓄えられる。この脂肪細胞が巨大化すると、そこから炎症を起こす物質(サイトカイン)が分泌され、歯ぐきに炎症を起こす。

 一方、カルシウムは、一般に歯に必要な栄養素とされているが、摂りすぎはかえってよくないという。小峰院長は特に、カルシウムとマグネシウムの摂取バランスが重要と説く。

「マグネシウムは、歯周病を引き起こすカルシウムの循環不良を改善する役割がある。日本ではカルシウム摂取ばかりが強調されるが、海外では30歳以降はマグネシウムの摂取が推奨されている」(小峰院長)

カルシウムが溶け出して歯がグラグラに

 カルシウムを摂取すると、大部分が骨や歯に貯蔵され、残りの一部がカルシウムイオンとして細胞内にたまる。細胞内のカルシウムイオンはポンプの力で血液中に押し出され、体内をめぐって心臓や脳で重要な働きをするが、加齢とともにポンプ機能が低下するのが問題だ。

 細胞内にどんどんカルシウムがたまるのに排出されにくくなり、血中カルシウムが不足する事態になる。すると、それを補うために骨からカルシウムが溶け出す。歯槽骨やあごの骨からはまっさきにカルシウムが溶け出し、歯がグラグラになる。

 また、細胞にカルシウムがたまりすぎると、今度は細胞内の濃度のバランスをとるため、細胞は水分を取り込んで膨れ上がり、最後にパチンと弾けてしまう。このとき、壊れた細胞から出たカルシウムは動脈硬化や腎臓結石などの害を引き起こす。

 これを是正してくれるのがマグネシウムで、たまったカルシウムを細胞の外へ押し出し、体内に巡らせ、血中のカルシウム濃度低下を解消してくれる働きがある。

「海藻は腎機能障害や甲状腺障害がない場合は、たくさん食べても問題ない。歯周病の改善のために、ぜひ積極的に食生活に取り入れてほしい」(小峰院長)

歯垢の形成を防ぐ成分を持つ海藻もある

 また、海藻からは、虫歯や歯周病の原因となる歯垢(バイオフィルム)をできにくくする成分が発見されている。

 岡山大学の研究グループは、海松(ミル)から発見された「ミルレクチン」が糖鎖と特異的に結合して、細菌がバイオフィルムを形成するのを阻害することを報告している。現在ではミルレクチンを配合した口腔ケア製品も市販されている。

 ちなみに海松は現在、日本ではあまり食べる習慣はなくなったが、飛鳥・奈良時代には一般的に食べられていたという。

 日本では古来、海藻を常食してきたが、海外では海藻を食べる国は少ない。日本人は海藻の栄養を吸収できるが、実は、海藻を食べる習慣のない国の人は、食べてもほとんど吸収できないと考えられている。

 これは、海藻の細胞壁を分解できる酵素を持つ腸内細菌が日本人に特有だからという。日本人だからこそ享受できる「海の恵み」を有効活用したいものだ。
(文=ヘルスプレス編集部)

小峰一雄(こみね・かずお)
小峰歯科医院理事長。1952年生まれ。歯学博士。城西歯科大学卒。37年前に開業して数年後、歯を削るとかえって歯がダメになる事実に直面し、以来「歯を削らない、抜髄しない」歯科医師に転向。独自の予防歯科プログラムを考案するとともに、食事療法、最先端医療を取り入れた治療を実践している。歯を削らずに虫歯を治療する「ドックベストセメント療法」の日本における第一人者として、2011年にTBS「世界のスーパードクター」をはじめ、メディアでの紹介も多数。現在は、ドックベストセメント療法を広めるセミナーを各地で開催するほか、東南アジアにてボランティア活動を展開。2015年、ラオス・ヘルスサイエンス大学客員教授に就任。日本臨床アンチエイジング研究会会長、Kデンチャー研究会主宰。著書に『名医は虫歯を削らない――虫歯も歯周病も「自然治癒力」で治す方法』(竹書房)、取材協力に『安心』編集部・編 『歯周病を自分で治す最強療法』(マキノ出版)など。

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