世界を見渡しても、日本ほど四季折々の風景が美しい国も珍しい。春の訪れを告げる桜に始まり、空の青と草木の緑が濃くなる夏、そして紅葉が山肌を染める秋を経て、銀世界が広がる冬へと、季節は繰り返し巡りゆく。多くの国では暑いか寒いか、雨期か乾期か、という程度の季節感しかないなかで、これほどまでに明確な四季を体感できる日本は素晴らしいというほかない。古来、俳句などにも用いられてきた季語は、そうした日本の美しさを如実に現しているといえるだろう。
この原稿を書いている現在、周囲では紅葉が見頃を迎えた。そもそも日本では当たり前の風景だが、実は地球上の一部の地域でしか見られないことはあまり知られていない。とりわけ日本の紅葉は、落葉広葉樹の種類が多いことによる色彩の豊富さから、世界一美しい紅葉といわれている。日本建築とも相性抜群のその風景を目に焼き付けるべく、週末に足を運んだ人も多いのではないだろうか?
一方で、カナダの紅葉も世界一美しいといわれている。「世界一」といわれているものが2つもあるというのも悩ましい話だが、いずれにしろ美しいことには間違いない。日本のそれが繊細な色合いにあるとすれば、カナダのそれはスケールの大きさによるものだろう。広大な面積を持つカナダの中でもメッカとされるのが、東部に位置するメープル街道だ。
紅葉の名所として世界的に有名なこの街道は、全長800kmに及ぶもので、東京から広島までの距離に相当する。紅葉シーズンになると、その一帯に群生するカナダの国旗でもお馴染みのシュガーメープルをはじめ、レッドメープル、ポプラ、シラカバなど、多くの木の葉が赤や黄などに変化し、山肌一面を染め上げる。広大な土地に続く秋の色彩は、どこまでも目を楽しませてくれる。
いつ、どうやって楽しむ?
しかし、悩ましいのが訪問時期。自然相手なだけに絶対にこの時期に訪れれば見られるというものではないのだ。一般的には9月の最終週から10月の2週目あたりが最適な時期とされているが、これだけ広い範囲に加えて標高差も地域によって異なるため、色づきが場所によって若干前後するからだ。そのため、できることなら真ん中の10月上旬が最も確率が高いといえるだろう。