なにやら「タバコ」をめぐる国内外の動きが、にわかに加速し始めた感が否めない。
11月6日、英国の医学誌に「日本の受動喫煙対策の遅れ」に警鐘を鳴らす、邦人医療専門家らによる論文が掲載されたとの報道が流れた。翌7日、自民党はその警鐘論文に呼応するかのように絶妙なタイミングで、一部で受動喫煙による健康被害の軽減効果が囁かれる「加熱式タバコ」を普及するための議員連盟を発足させて、初会合を開いた。
奇しくも同じ7日、今度はNHKをはじめ一部のマスコミが、政府が(社会保障に充てる財源確保のために)たばこ税を「1本当たり1円増税」する方針だと報じた。具体的には、来年10月に「1円増税」→(消費税10%アップの)2019年は見送り→(オリンピック・イヤーの)2020年と翌21年にも各1円ずつ増税。その結果、1本当たり計3円のアップで2000~3000億円の増収を見込んでいるという。
隣国では早くも増税可決
前掲の議連・望月義夫会長(元環境相)は「次世代たばこ研究会」と設立趣旨を表し、加熱式タバコなどに関しても「もっと研究していかないといけない」と説明した。
明けて8日には、同じ自民党内の「受動喫煙防止議員連盟」(山東昭子会長)が会合を開き、「厳格な受動喫煙規制の実現」に向けて、早ければ来年の通常国会における関連法成立をめざす方針を確認した。
一方、そんな日本の対策の遅れを尻目に隣国・韓国では9日、加熱式タバコの増税案を早々に可決した。
ちなみに韓国の場合、「iQOS(アイコス)」(フィリップ・モリス社)を例にとれば、今年6月の発売で即完売のブレイクぶり。後発の「glo(グロー)」(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社)も好調で、今後は国産の加熱式タバコ「Lil(リル)」(韓国タバコ人参会社)も市場参入する。
人気&売上でアイコスに後れをとる日本産の「Ploom Tech(プルーム・テック)」(JT)は、今年7月からスイス(=ニコチンの添加規制が日本と相似)で販売を開始している。
「電子タバコ」と「非燃焼・加熱式タバコ」の違いは?
だが、非喫煙者にしてみれば、「加熱式タバコ」と「電子タバコ」の違いなど、よくわからないという人も少なくないだろう。
まず「電子たばこ」について「日本呼吸器学会公式サイト」は、以下の2種類に定義している。
(1)液体(リキッド)を加熱してエアロゾルを発生させて吸引するタイプ
(2)液体(リキッド)には、ニコチンを含むものと含まないもの
※注:海外ではニコチン入りリキッドが販売されている。一方、日本では、医薬品医療機器法(旧薬事法)による規制により、ニコチン入りリキッドは販売されていない。
一方の「非燃焼・加熱式たばこ(Heat-burn tobacco)」の定義を同サイトから引用すれば、以下の2種類に分けられる。
(1)葉タバコを直接加熱し、ニコチンを含むエアロゾルを吸引するタイプ(アイコス、グロー)
(2)低温で霧化する有機溶剤からエアロゾルを発生させた後、タバコ粉末を通過させてタバコ成分を吸引するタイプで、電子たばこに類似した仕組み(プルームテック)
ちなみにエアロゾルとは、気体中に浮遊する「微小な液体」あるいは「固体の粒子」の意だ。
日本呼吸器学会は「新型たばこも推奨できない」と公表
日本呼吸器学会はこのたび、前出の公式サイト上でこうした「新型タバコ」(電子タバコと非燃焼・加熱式タバコの総称)に対する見解として、「(使用者にも受動喫煙者にも)推奨できない」と公表した。
もちろん、新型タバコの使用と受動喫煙による病気/死亡リスクの関連性はいずれも、エビデンスが得られるまでには今後もかなりの時間を要する。
だが、それらの嗜好人口が急速に増加の一途にある昨今の対健康情勢を鑑み、日本呼吸学会も「推奨できない」という見解を示したことは明らかだろう。
最後に「新型タバコ普及の立役者」であるアイコスの意外な話題を紹介しよう。実は、発売元のフィリップ・モリス社は現在、この超人気商品の販売申請を米国食品医薬品局(FDA)に出している最中だという。
そう、フィリップ・モリス社は本社をニューヨークに構えながら、世界中に公称370万人の愛好家がいるというこの大ヒット商品の販売許可を、肝心の本国アメリカでは、いまだに得られていなかったのだ。
(文=ヘルスプレス編集部)