9月24日付本連載記事『安倍政権、大学教育を破壊するトンデモ改革!教育の自由をはく奪し、金で頬を叩く』で、現在進められている国立大学改革を紹介した。安倍政権は、「今後10年間で、世界大学ランキングトップ100に10校以上をランクインさせる」という目標を設定し、国立の各大学が重点支援のための3つの枠組み「地域貢献」「特定分野」「世界水準」のいずれかを選択し、その枠組みのなかで改革の取り組み状況等について評価を行い、国立大学運営費交付金のメリハリある配分を行うことを打ち出した。
これは、3つの枠組みのいずれかで成果が挙がれば交付金が増えるという「金で頬を叩くことで、言うことを聞かせる政策」であり、国立大学教育の自由度を著しく損なう。結果的に86の国立大学のうち、全体の3分の2近い55大学が地域貢献を選択、特定分野を選択したのは15大学、世界水準を選択したのは16大学となった。
確かに世界水準を選択した大学は、世界大学ランキングに登場する大学だ。しかし、だからといって、「地域貢献」「特定分野」「世界水準」の3つの枠組みに国立大学を色分けすることが、本当に日本の大学の実力を向上することになるのであろうか。
たとえば、近年のノーベル賞受賞者は世界水準を選択していない国立大学の出身者が多い。2008年に化学賞を受賞した下村脩・米ボストン大学名誉教授は長崎大学出身、14年の物理学賞を受賞した中村修二・米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授は徳島大学出身、今年の生理学・医学賞を受賞した大村智・北里大学特別栄誉教授は山梨大学出身、物理学賞を受賞した梶田隆章・東京大学宇宙線研究所所長は埼玉大学出身だ。
世界大学ランキングに登場しない国立大学だからといって、軽んじるべきではない。教育の自由さや研究の自由さこそが個人・研究者を育み、大輪の花を咲かせるのだ。
大学改革の迷走
事実、私立大学を含めて安倍政権の大学改革は迷走している。今年6月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」では、地方創生の施策のひとつとして、「知の拠点として地方大学強化プラン」が盛り込まれている。地方大学等を活性化することで、地方への新しい人の流れをつくろうという狙いだ。
たとえば、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」では、地方を担う人材の育成に取り組む大学が、自治体、地元企業、地元NPOなどと協働して、地方創生を推進・拡大する取り組みに対して支援を行う。COCとは、Center of Communityの略で、地域の中核を意味する。