12月に入り、いよいよ本格的に冬が到来する。この季節に注意しなければいけないのは、梅雨どきの悩みと思われている「カビ」だ。
実は、カビには冬に増殖しやすい「冬カビ」が存在する。放っておくと、呼吸器系アレルギーなどの思わぬ健康被害を招くこともあるのだ。そこで、千葉大学真菌医学研究センター准教授の矢口貴志氏に対策法を聞いた。
室内には、さまざまなカビ菌が1年中ウヨウヨ
大気が乾燥している冬でもカビが増殖する場所はどこか。病原性のカビなどを専門に研究している矢口氏によると、それは私たちが生活している室内だという。
「季節によって多少の増減はありますが、室内にはさまざまなカビ菌が1年中存在しています。かつての住宅環境なら、冬はすき間風が吹いて室内が低温で乾燥していたため、カビの数も減りました。しかし、現代の室内は気密性が高くなっています。さらに、冬は暖房をつけて温度を上げて、加湿器を使って湿度を上げているので、冬でも室内のカビが減りにくくなっているのです」(矢口氏)
人間が住みやすい環境は、カビにとっても快適な環境なのだ。なかでも、冬に増えるカビの代表が「クラドスポリウム(黒カビ)」である。
「室内にいるカビの種類は年間を通してほとんど同じですが、季節ごとにその数が増減します。梅雨どきに多いカビと冬に増えるカビは違うのです。クラドスポリウムは、室内でもっとも数が多いカビの一種で、湿度の高い浴室や台所や、低温の冷蔵庫のパッキンなどにも発生します」(同)
ほかにも、比較的湿度が低いエアコンのフィルター、部屋の隅のほこりのなかにもクラドスポリウムが存在するという。ある意味、とても身近にいるカビなのだ。
「クラドスポリウムは、もともと数が多いのですが、冬になるとさらに増えます。たとえば、窓のパッキン部分や、押入れの壁などの外気との温度差があり、結露する場所に発生しやすいのが特徴です」(同)
窓の結露は目につきやすいが、意外に盲点となるのが押入れの壁。構造的に外壁と接している押入れの壁は、冬になると室内との温度差が生じて結露が発生し、カビが発生しやすくなるという。
冬カビの放置はのどの痛みや咳の原因に
気になるのは、この冬カビがどのような健康被害を及ぼすかということだ。
「クラドスポリウムは、感染力が強いカビではありません。しかし、そのまま放っておくと胞子を多く吸ってしまい、呼吸器系のアレルギーを起こす恐れがあります。鼻水、鼻づまり、のどの痛みや咳、痰のからみといったものが代表的な症状です」(同)
この呼吸器系アレルギーは、カビのほかにもハウスダストやダニなどが発症の原因になり得るという。
「また、エアコンのフィルターのほこりにも多くのカビが存在します。暖房を使うときにフィルターがほこりまみれだと、カビの胞子やハウスダストを吸い込み、呼吸器系アレルギーの原因になる可能性が高くなります」(同)
こまめに掃除をせず、ほこりだらけの部屋で寝起きしていたら、いつの間にか原因不明ののどの痛みや咳に悩まされるようになった……。こんな経験がある人は、カビやダニなどが原因となっている可能性がある。