口腔ケアの一環として、多くの日本人が習慣にしている歯ブラシを使った食後の歯磨き。最近では、毎食後に歯を磨く人も珍しくない。
しかし、この歯磨き習慣に対して、「食後の歯磨きは、口臭ケアや歯垢除去の観点では効果がなく、逆効果になっている可能性もあります」と異を唱えるのは、『歯はみがいてはいけない』『やっぱり、歯はみがいてはいけない 実践編』(ともに講談社)の著者で竹屋町森歯科クリニック院長の森昭さんだ。
健康に直結する「唾液」の効能
日本の歯科常識に警鐘を鳴らした『歯はみがいてはいけない』『やっぱり、歯はみがいてはいけない 実践編』は、シリーズ累計6万部を超えるベストセラーとなっている。
見ての通り、かなり“攻めたタイトル”だったことから、「同業者の方から苦言を呈されることもありました」と森さんは語る。
「しかし、本書を読んでもらえばわかりますが、私は『一切歯を磨くな』とは言っていません。歯の磨き方、磨くタイミング、道具選びなど、臨床歯科医師として感じたことについて書いています」(森さん)
「歯科治療や予防のオプションとして施術しているのですが、施術を続けているうちに、口腔内だけでなく全身の状態までよくなる患者さんが現れたのです。私も唾液の効能は理解していましたが、続けるうちに、施術後にたくさん分泌される唾液が患者さんの健康に関係していることがわかりました」(同)
森さんによると、唾液には感染症を引き起こす細菌の塊(歯垢=プラーク)の増殖を抑えたり食べかすを押し出して洗浄したりと、さまざまな効能があるという。ところが、今多くの日本人に定着しているのは、唾液がもっとも能力を発揮する食後に唾液を外に吐き出す“歯磨き習慣”だった。
「臨床歯科医師として『この現状に警鐘を鳴らさなければ』と感じたことが、本書を執筆した一番大きな理由です」(同)
食後すぐの歯磨きは歯の表面を傷つけてしまう?
ただ、毎食後に歯磨き粉(歯磨剤)をつけた歯ブラシでゴシゴシとブラッシングするのは、いわば日本人の常識ともいえる衛生習慣だ。実際、歯科医院を受診した際に、歯科衛生士などにそうしたやり方を指導された人も多いのではないだろうか。
しかし、森さんはこの歯磨き習慣のデメリットをこう指摘する。
「食後の口内は酸性にかたむき、歯のエナメル質がやわらかくなります。このタイミングでブラッシングすると、歯の表面を傷つけてしまうのです。また、食後に歯磨きをすると、歯を元の硬さに戻す働きをする唾液まで水と一緒に吐き出されてしまうため、その恩恵を受けられないのです」(同)
恐ろしいのは、間違った歯磨き習慣は単に歯によくないだけではなく、続けることで命にかかわる病気を招く危険性もあることだ。
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