「代表的な口内トラブルに『歯周病』があります。実は、この歯周病が歯肉を経由し、血液を通して全身に広がってしまうと、脳梗塞や心筋梗塞、さらに目や足の壊疽にもつながる危険性があるのです」(同)
こうした“全身病”に深く関係しているのが、細菌の塊である「歯垢=プラーク」だ。本来、口腔ケアの目的はこのプラークの除去にある。
しかし、多くの日本人が行っている歯磨きでは「プラークを取り除くことは難しい」と森さんは言う。
「歯磨剤をたっぷりつけた歯ブラシで磨いても、プラークは30%程度しか除去できないといわれています。にもかかわらず、日本では歯ブラシがケアの中心となっている。そうした点にも違和感がありました」(同)
では、いったいどんなやり方で口腔ケアを行えばいいのだろうか。
口腔ケアに有効なデンタルフロスと歯間ブラシ
森さんによれば、プラークを除去するために使うべき器具は、おもに「デンタルフロス」(以下、フロス)や「歯間ブラシ」だという。
「歯ブラシでは全体の30%しかプラークを除去できませんが、フロスなら残りの70%も除去できます。アメリカでは『Floss or Die(フロスしますか、それとも死にますか?)』という強烈な言葉があるくらい、フロスによるプラークコントロールの重要性が認識されています」(同)
フロスとは、歯間に用いる糸状のケア器具のこと。現在は必要な分だけ引き出すロールタイプと取手付きのホルダータイプが主流となっている。
「プラークは歯の表面よりも歯と歯の間に多く付着しています。歯間には歯ブラシの毛先が届かないのでプラークを除去できませんが、フロスや歯間ブラシなら歯のすき間に入って歯垢を取り除くことができるわけです」(同)
そして、もうひとつ重要なのは、フロスにはプラークの除去効果があるだけではなく、「唾液の通り道」をつくる働きもあることだ。
「唾液は、殺菌効果をはじめ、消臭効果もある天然の歯磨剤です。歯周病や虫歯などのトラブルがなく、唾液が正常に機能してさえいれば、健康な人に歯磨剤は必要ありません。唾液さえ口の中で循環させることができれば、あらゆる口内トラブルの予防にもつながります」(同)
もっとも、森さんが言うように、口内トラブルを抱えている場合は別のケアが必要となる。その場合は、市販の歯磨剤ではなく、歯科医院で販売している薬理作用がある歯磨剤を医師の指導の下で使うのが基本だ。
「口内トラブルのない健康な人は唾液を生かす方法のケアに変え、その補助として歯ブラシを使ってほしい」と森さんは語る。
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