26日、“深キョン”の愛称で親しまれる女優の深田恭子が適応障害と診断され活動休止に入ることが発表された。27日付「スポニチアネックス」記事によれば、深田は今月、映画撮影終了直後に倒れ、病院に搬送され治療を受けていたという。さらに、ここ最近は舞台の稽古やCMの撮影なども重なっていたという。
主演予定だった7月期のフジテレビ系ドラマからの降板がすでに発表されているが、ここ数年は“働きづめ”という印象が強い。2019年には、“はじ恋”の愛称で話題作となった『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)、『ルパンの娘』(フジテレビ系)の2本の連続テレビドラマに主演。昨年20年も『ルパンの娘』第2シリーズに主演し、同作の映画版も今年10月に公開予定だ。
こうした過密スケジュールが体調不良につながったのではないかと心配する声も出ているが、適応障害とはどのような症状なのか。精神科医の片田珠美氏に解説してもらう。
ストレス因子
適応障害は、何らかの心理社会的ストレス因子への反応として心身に不調をきたす病気です。出現する症状はさまざまで、身体症状としては、頭痛、腹痛、めまい、動悸、吐き気、下痢、食欲不振、全身倦怠感などが多く、精神症状としては、不安、不眠、焦燥感、集中力低下などが多いようです。
抑うつ気分を伴うケースも少なくなく、その場合はうつとの鑑別診断が必要になります。適応障害のほうが、ストレス因子がはっきりしていて、環境的要因が大きいことが、うつとの違いといえるでしょう。
ストレス因子になるのは、人間関係、業務内容、長時間労働、異動や昇進、転勤や転居、上司が替わったことなど、さまざまです。最近増えているストレス因子としては、IT化の流れの中でパソコンを使わなければならなくなったが、なかなか慣れなくてミスが多く叱責されたとか、コロナ禍でテレワークになって自宅で仕事をするようになったが、集中できず成果を出せないとかいったものです。ですから、誰でも生活の中で経験するようなストレスに対処できなくて、適応障害になるわけです。
深田恭子さんの場合、何がストレス因子になったのでしょうか。一部報道によれば、映画の撮影、舞台作品の稽古、CMの撮影などで激務が続いていたうえ、フジテレビの連続ドラマが近日中にクランクインする予定だったということなので、オーバーワークがストレス因子になったのかもしれません。
また、連続ドラマの主演を務めるということで、重圧を感じていた可能性もあります。深田さんと同じ事務所に所属する綾瀬はるかさんが主演を務めた今年1月期の連ドラ『天国と地獄〜サイコな2人〜』(TBS系)の視聴率が良く、2桁台を維持していたこともあって、『自分も頑張らなければ』と肩に力が入りすぎていたとも考えられます。
さらに、深田さんと綾瀬さんとともに『ホリプロ3人娘』と呼ばれている石原さとみさんが最近結婚しましたが、深田さんも、不動産会社を経営する5歳年上の杉本宏之氏と交際しており、結婚を望んでいるという報道がありました。あくまでも一般論ですが、女性の場合、恋愛や結婚がうまくいかないことがストレス因子になることも少なくありません。
あるいは、芸能界特有の事情が影響しているのかもしれません。“人気”という目に見えないあやふやなものをめぐってしのぎを削るのが芸能界ですが、テレビであれば視聴率、映画であれば観客動員数や興行収入、動画であれば再生回数という数字ではっきり示されるという残酷な面もあります。その重圧たるや、一般人には想像もつかないほどのものでしょうから、20数年間トップランナーとして走ってきて、その疲労が1度に出てきたとも考えられます。深田さんは、周囲の期待に応えようと頑張りすぎて、過剰適応になり、もうこれ以上頑張れないと心身が悲鳴をあげて適応障害になった可能性もあります。
加えて、日本の芸能界特有の残酷な事情も影響しているのではないでしょうか。深田さんは38歳ですが、とてもおきれいでスタイルも抜群です。ただ、女優さんが40歳を過ぎると、演じる役柄が途端に限定され、母親役もしくは医師や弁護士などのバリバリのキャリアウーマン役しか回ってこないような印象を受けます。深田さんは、可愛くてふんわりしたイメージであり、どちらの役にも向いていないように見受けられるので、将来への不安が募ったとしても不思議ではありません。
ゆっくり休養することが必要
適応障害の治療は、まず患者さんの話をじっくりと聴き、ストレス因子を特定することから始めます。何がストレス因子になっているのか、わかれば、それをできるだけ減らすように、環境を調整します。しかし、ストレス因子が職場にあっても、上司や人間関係の変化を期待するのは難しいことが少なくないので、そういう場合は「休業加療を要する」という旨の診断書を出して、ストレス因子から離れていただくようにします。
ストレス因子から離れると、症状は改善することが多いです。ただ、不眠がつらい場合は睡眠導入剤、不安が強い場合は抗不安薬、抑うつ気分が強い場合は抗うつ薬を処方します。患者さんが希望されれば、カウンセリングや認知行動療法も実施します。早ければ1カ月、だいたい3~6カ月で回復することが多いですが、6カ月以上長引くこともあり、その場合は持続性適応障害と呼びます。
とにかくストレス因子から離れて、ゆっくり休養することが必要です。一番悪いのは、「早く復帰しないと、芸能界での私の居場所がなくなる」と焦って、じっくり休養できないことです。完全に回復していないのに復帰して、またストレス因子にさらされると、再発しかねません。また、復帰に際してはストレス因子をできるだけ減らすように環境を調整することも必要でしょう。
深田さんは今月中旬、映画の撮影直後に倒れて、搬送され点滴治療を受けたということですから、一時は深刻な病状だったと考えられます。今は、ゆっくり休んで、焦らないことが何よりも大切ですし、周囲のサポートも欠かせません。
(構成=編集部、協力=片田珠美/精神科医)