意外に間違えやすい“野菜の洗い方”!食中毒の恐れ…中がピンク色の鶏肉・豚肉は絶対NG
食中毒のシーズンです。予防の極意をまとめておきましょう。まず意外な盲点が野菜と果物です。野菜と果物、よく洗って食べていますか?
野菜・果物は生で食べるものであるため、表面についている細菌やウイルスが食中毒の原因となります。ご存じの大腸菌は、食中毒を起こす代表的な細菌ですが、その一種であるO157がとくに病原性が強く、要注意です。ほかにA型肝炎ウイルス、ノロウイルスなども原因となることがあります。
ある実験によれば、水を張った洗い桶に野菜や果物を数分間、浸しておくだけで、表面についた微生物や農薬が50~95パーセントは落ちます。微生物が単独で付着することはなく、ほとんどがなんらかの汚れと一緒になっているため、この方法でかなり落とせるのです。ちなみに熱いお湯で洗っても殺菌効果はほとんどありませんので、手をやけどするだけ損です【注1】。
そのあと水道の蛇口の下でよく洗いますが、リンゴのように皮ごと食べる果物は、スポンジでこするようにすると、ほぼ完璧です。余談ですが、多くの野菜・果物では皮と、そのすぐその下の実の部分に「抗酸化物質」という成分が凝縮されています。がんなどの成人病を予防する絶大な効果がありますので、なるべく皮ごと食べましょう。
キャベツやレタスのような葉物野菜は、葉を1枚ずつはがしてから洗ってください。バナナのように皮をむいて食べる果物も、なるべく表面を洗ってください。イチゴ、ブルーベリー、ブドウなどの果物や、トマトやキュウリなどの野菜は、生産者が手で摘み取るものですから、桶の水に浸したあとザルに入れて流水で念入りに洗ってください。
やってならないのは洗剤を使うことです。洗剤にはさまざまな化学物質が入っていますから、それが体内に入ってしまうことのほうが、よほど危険です。
気をつけたいのは、生肉などを調理したまな板で野菜・果物をカットしたりしないことです。生肉も、食中毒を起こす原因になっているからです。牛肉の表面には病原性の強い0157などが付着しているかもしれませんので、少なくとも表面はしっかり火を通してください【注2】。
生焼けのハンバーグは厳禁
0157によって起こる食中毒で多いのはハンバーグです。なぜなら、ひき肉にしてこねる際、表面に付着した0157が混じり合わされてしまうためです。たとえ牛肉100パーセントでも、中まで火が通っていない生焼けのハンバーグは危険です。
豚肉は、昔から言われているとおり、生で食べるのは厳禁です。サルモネラ菌、カンピロバクター、肝炎ウイルスなど、食中毒の原因となるさまざまな微生物が肉の中まで入り込んでいるため、表面を焼くだけでは不十分なのです。豚肉は、中までしっかり熱を加えるのが食中毒予防の絶対条件です。
最近は、鶏肉による食中毒が急増しています。焼き鳥、から揚げなどのブームが関係しているのかもしれません。鶏肉を調理する際は、肉の中心が72℃を超えるまで、しっかり加熱してください【注3】。ピンク色から白っぽい色に変われば大丈夫と思われがちですが、それでは足りません。鶏肉に刺して中心の温度を測る専用の調理器具もありますので、お勧めです。飲食店で食事をしていて、もし中身がピンク色のままの鶏肉料理が出てきたら、絶対に食べないことです。
ウイルスや細菌によって起こる食中毒の症状は、吐き気、嘔吐、胃痛、下痢、発熱などです。原因となる微生物によって、食べたあと2~3時間ほどで起こる場合と、2日ほど経ってから起こる場合とがあります。食中毒は集団で発生することも多く、これから夏本番を迎えるにあたり、覚えておくとよいでしょう。
O157などの細菌では、体内にある「毒素」が食中毒の原因となります。この毒素は熱で分解されないという特徴がありますので、とにかく細菌を増殖させないことが大切です。以前、外食のカレーで食中毒が多発していたことがありました。鍋を洗わずに食材を日々継ぎ足していたため、鍋の底で食中毒菌が繁殖してしまったのです。「代々継ぎ足し秘伝だれ」なども気になるところです。
調理鍋や食器、あるいは弁当箱の中で細菌が一旦、繁殖してしまうと、いくら加熱しても消毒したことになりません。むしろ毒素が散らばってしまうだけです。食べ物を入れたままの器を長時間、放置しないことと、洗うときはスポンジなどでゴシゴシこする必要があります。
このご時世、食中毒のリスクもお忘れなく。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)
参考文献
【1】岡田正彦、『がんは8割防げる』(祥伝社新書)
【2】Egan S, Do I always need to wash fruits and vegetables? Do I need a special soap? New York Times, Jun 29, 2021.
【3】Klein J, Your chicken is no longer pink. That doesn’t mean it’s safe to eat. New York Times. May 1, 2020.