働き方改“悪”の危険性…厚労省、医師等の一部職種に「月160時間」残業を容認か
紆余曲折の末、本年4月から、働く人の残業時間(時間外労働時間)に上限が設けられます。いよいよ安倍政権による働き方改革が始まります。
働き方改革により、働く人の時間外労働時間は原則月45時間、年360時間となります。特別な場合でも単月100時間未満、年720時間とすることが法律で定められました(中小企業においては、いきなりの実施は困難が予想されるとのことで、2020年4月から適用となります)。
しかし、ワークライフバランスを推進するはずの働き方改革のなか、一部の職種においては、年間1920時間、月の平均に換算すると160時間までの時間外労働を容認する方向で、厚生労働省が調整しているとのニュースが発表されました。
わかりやすくするために計算してみると、単月の時間外労働時間160時間とは、週休2日の場合1カ月に労働する平日が21日となるので、毎日約7時間30分の残業となります。9時から業務開始の場合、就業8時間+昼休み1時間+残業7.5時間で、午前1時30分まで働くことになります。1カ月間休みなく働く場合は、月に30日間働くとして毎日約5時間20分の残業で、午後11時20分までとなります。
この一般的労働者よりも長時間残業が容認された職業は、「医師不足の地域や診療科に勤める医師たち」です。理由は、患者や地域医療への影響を考慮したためとのことで、厚生労働省は本年3月末までに規制の内容をまとめることにしています。
そもそも厚生労働省は、時間外労働時間は月に45時間を超えると健康に影響が出始め、80時間以上では健康障害のリスクが増加するとして、平成18年から長時間労働者に積極的に医師面談(過重労働面談)の受診を勧奨しています。
医療過疎地の医師不足は悪化の懸念
月160時間までの時間外労働が許容されるのであれば、残念ながらここから推測される時間外労働と健康に関することは2つです。
1.時間外労働時間が80-100時間を超えると健康障害リスクが高まるが、一部職種においては、健康障害があって構わない。
2.そもそも時間外労働時間と健康障害リスクには、いっているほど相関はなく、月160時間までの時間外労働も健康被害はない。
私も一人の医師として、このような働き方改革には疑問を感じずにはいられません。また、医療過疎地における医師不足事情は、このような労働環境を理由に、さらに悪化することを懸念します。