気温が上がり、本格的に春の到来を感じる今日この頃。時間も場所も問わず眠気に襲われる、という人も多いのではないだろうか。実は、春の眠気の原因は暖かい気温のせいだけではない。この季節ならではの「ストレス」や「外的要因」によって睡眠不足になり、日中の眠気を招いてしまうこともあるという。寝ても醒めない、春の睡眠の謎に迫った。
冬と比べて睡眠の質が格段に上がる「春」
有名なことわざ「春眠暁を覚えず」は、「春の夜はまことに眠り心地がいいので、朝が来たことにも気づかず、つい寝過ごしてしまう」ことを指す(出典:デジタル大辞泉)。
「春は一日中ずっと眠い」という意味だと勘違いしていた人もいるのではないだろうか。
「『春眠暁を覚えず』が示すのは、朝方にうとうとしていたらもう一度寝入ってしまった、最高の二度寝のパターンでもありますね。春は、夜にぐっすり眠り日中は活動的になれる、メリハリが効いた季節でもあるんです」
そう話すのは、日本睡眠改善協議会上級睡眠改善インストラクターの安達直美さんだ。安達さんによると、「冷え込みが激しい冬に比べて、春は睡眠の質が格段に上がる」という。
「あまり意識している人はいないかもしれませんが、就寝する部屋の温度や湿度、日照時間などの外的要因や日中の運動量は“睡眠の質”を大きく左右します。冬は夜が長いので睡眠時間も長くなるのですが、熟睡するには気温が低く、日中もあまり動かないので“睡眠の質”が悪くなる傾向があります。一方、春の温度と湿度は睡眠に適しており、日中も活動的になるので睡眠の質がアップする時期なんです」(安達さん)
睡眠に適した季節にもかかわらず、日中に眠気を感じる人は夜に十分眠れていない可能性が高い、と安達さんは指摘する。
「『春眠暁を覚えず』は、ポカポカとした心地良い陽気によって眠くなったり寝過ごしたりすることではなく、あくまで朝方までぐっすり眠れるという話です。なので、日中に感じている眠気は、ただの睡眠不足によるものである可能性が高いんです」(同)
春の睡眠不足が花粉症や5月病に連鎖?
特に現代人の春は睡眠の質を下げる要素であふれている、と安達さんは指摘する。
「睡眠に適しているとはいえ、春は季節の変わり目です。寒暖差や気候の変化が睡眠に大きな影響を与えているのは間違いないでしょう。特に影響が大きいとされているのは、不安定な気候が引き起こす“自律神経の乱れ”です」(同)
春は低気圧と高気圧が入れ替わる気圧変動が頻繁に起きる季節。季節の変わり目特有の不安定さが自律神経の乱れを引き起こすのだという。では、自律神経の乱れは睡眠にどのような悪影響を与えるのだろうか。
「自律神経には人間の体温をコントロールする役割もあるとされ、体温の調節は睡眠にとって欠かせない要素のひとつです。自律神経は、日中の活動時には“交感神経”を優位にして体温を上げ、眠るときは“副交感神経”に切り替えて体の深部体温を下げる働きをします。しかし、自律神経が乱れていると交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかず、睡眠を妨げてしまうのです」(同)