毎年のことながら、なかなか対策できないのが「花粉症」。日本気象協会の発表によれば、今年の花粉の飛散量は例年に比べ110%(関東甲信地方)と、やや多くなることが予想されている。
敏感な人は、花粉が飛散する前からいろいろと対策を立てていることだろう。耳鼻科での処置だけでなく、マスクとメガネを常備、さらに服などについた花粉を落とすといったケアを徹底しても、すでに症状が出てしまっているとなかなか改善は難しい。
そこで注目を集めているのが、抜本的な体質改善を促すという「鍼治療」だ。花粉症対策としての鍼治療を行っている鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」の栗原誠代表に、東洋医学的な花粉症へのアプローチについて聞いた。
鍼治療独特の「のぼせ」の理論
「鍼治療によって、くしゃみ、鼻水・鼻づまり、目のかゆみなどの花粉症の症状の改善が見込めます。花粉症の症状は、首・肩のこりや便秘など、体全体のコンディションとの相関性が強い。それを鍼治療で整えることで、花粉症の症状を和らげるのです」(栗原氏)
「便秘と花粉症になんの関係が?」と疑いたくなるが、そこには鍼治療独特の「のぼせ」の理論がある。
「便秘ということは胃腸の調子が悪いということです。調子の悪い部位には熱がこもりやすくなります。余分な熱が体内にこもっている状態では全身が過敏になって、花粉に反応しやすくなる。首・肩のこりも循環を妨げるため、頭に熱がこもってのぼせた状態になり、過敏な反応を引き起こします」(同)
また、東洋医学では、寒さから暖かさへ移り変わる春の季節は特にのぼせやすいといわれており、体が敏感になるという。その時期と花粉の飛散時期が重なるため、症状が出やすいそうだ。
「局所的な効果」と「遠隔の作用」で症状を抑制
鍼治療では、局所的な効果と遠隔の作用を利用して症状を抑えていく。
「鍼を打った箇所の緊張を緩め、流れを良くするのは『局所的な効果』。それに、頭痛を和らげるために手の甲にあるツボを刺激するような『遠隔の作用』をうまく組み合わせて、原因にアプローチしていきます。そこは施術者の腕の見せどころでもあります」(同)
治療の効果を実感できるのは平均して3~5回目で、効果の出方には個人差があるそうだ。
「ツボは一人ひとり違うため、体の個性や状態に合わせて一番効果が表れる箇所を探っていきます。1回の施術でも、その場しのぎの効果が得られるかもしれませんが、体に楽な状態を覚えさせ定着させるためには、ある程度施術を反復する必要があります」(同)
ちなみに、花粉症の症状がピークを迎えてからでは症状の下げ幅は小さくなってしまうため、症状が出る前、または症状が出始めてすぐ治療にかかると、効果を実感しやすいという。
3つの「首」を冷えから守ることが大切
花粉症には日頃の生活習慣も深く関係しており、鍼治療の効果もそれによって左右されるようだ。
「一番大切なのは睡眠です。昼間は脳が活動しているため、誰でも相対的にのぼせています。眠っている間はのぼせが引いて、実際に脳の温度も低くなります。ちゃんと眠らないと脳の温度を下げる良い機会を逃し、のぼせっぱなしになってしまうんです。食生活についても同様に普段の心がけが大切で、胃腸に負担をかけるものや消化の悪いものは控えるべきですね」(同)