前述の通り、2年縛りはデメリットばかりではなく、長期契約による割引という明確なメリットも存在する。また、2年経過後に自動的に割引契約を解除した場合、突然料金が高騰することで逆に苦情が増えることも考えられる。現在の2年縛りがある料金プランの存在自体が必ずしも問題があるわけではなく、その存在がなくなるとは考えにくい。
だが一方で、2年縛りが料金の選択肢を実質的に奪っており、なおかつ2年以上ユーザーを縛りつける要因となっている点は、改善が求められるところだ。それゆえ今回の措置を受け、更新月の長期化や、2年契約以外の料金プランの選択肢が用意されるなど、2年縛りに関してなんらかの緩和が進む可能性は高い。
実際、総務省が実施した「ICTサービス安心・安全研究会」の第6回会合では、主要3キャリアが更新月を2カ月に延長し、さらに更新月をSMSなどでプッシュ通知するなど、今後、より無料で解除しやすい仕組みを用意するとしている。また最近では、一部キャリアがより縛りの緩い、新しい料金プランを用意するとの報道もなされている。義務化がなされたSIMロック解除のように、キャリア側の対応が進まなければ総務省がより強い措置を取ることも十分あり得るだけに、自主的な努力で改善が進むことを期待したいところだ。
ちなみに、縛りに関しては大手キャリアの問題が指摘されがちだが、総務省が推進しているMVNO(携帯電話会社から回線を借りる仮想移動体通信業者)の側にも、MNPでの転出時に1万円を超える転出料を課すなど、解約に厳しい制約を設けるケースが出てきている。多くのMVNOは、大手キャリアのキャッシュバックを目当てとしたMNPによる短期間での転出を防止するために、縛りや転出料を設けているのだが、これも度がすぎると競争を妨げる要素のひとつとなってしまうだけに、こちらの動向も注視する必要があるだろう。
(文=佐野正弘/ITライター)