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スマホの5Gは“つながりにくい&通信料割高”…利用者になんのメリットもない

2020.08.22 2024.02.16 14:45 IT
スマホの5Gは“つながりにくい&通信料割高”…利用者になんのメリットもないの画像1
「gettyimages」より

「2時間の映画が3秒でダウンロードできる」

 そんな触れ込みで、5Gがもてはやされていた。この5Gは、AIや4K、ARなどのテクノロジーともセットにされ、世界をガラリと変える立役者のような持ち上げられ方をしていた。2020年の3月には満を持して商用化がスタート。すでに都市部を中心にサービスが開始されている。

 そんな鳴り物入りでスタートした5Gだが、蓋を開けて見れば世界を変える動きは一向に見られない。「5Gを使っている知り合い」がいない人も多いのではないだろうか。サービス開始前には大きな注目も期待も集めていた5Gだが、この先数年は“使い物”にならないだろう。世界を変えるポテンシャルは持っているが、まだ時期尚早。キャリアのマーケティングに乗せられて騒ぐ必要はないのだ。

 ではなぜ数年は使い物にならないのか。

 現状を見てみると、ネット通信のニーズはきわめて高くなっている。特に、動画サービスは隆盛を極めている。YouTubeやNetflixは大人気であるし、Zoomなどビデオ会議ツールもビジネスの現場では当たり前の存在となった。そう考えると、4Gに比べて最高速度が100倍ともいわれる超高速性を持つ5Gは、すぐさまヒットして当たり前と思われる。

 だが、「つながりやすさ」と「料金」の2つの面において、ここ数年で5Gが普及していくことは考えづらい。

つながりやすさ

 順に見ていこう。まずはつながりやすさだ。

 一口に「電波」といっても、「周波数」によって、つながりやすさは大きく異なる。ここで、ソフトバンクがボーダフォンから日本法人を買収し、モバイル業界に参入した頃を思い出してほしい。「ソフトバンク=つながりにくい」というイメージがあったはずだ。これはイメージではなく、本当につながりづらかった。この悪評の原因は、ソフトバンクが使用していた周波数に由来する。当時のソフトバンクがメインで使用していたのは、「2.1GHz帯および1.5GHz帯」だった。一方で、ソフトバンクに比べて「つながりやすい」と言われていたNTTドコモとauは800MHz帯を使用していた。

 いったい何が違うのか。実は、周波数が高いと電波の「直進性」が強い。いわば、まっすぐ進むのは得意なのだが、回り込むような動きは苦手なのだ。すると、建物の裏側や山間部などでは、電波が届きづらかった。

 しかし、今ではソフトバンクに「つながりづらい」というイメージはなくなった。これもまたイメージではなく、本当につながりづらさはなくなった。今回も周波数が影響しており、ソフトバンクは12年に晴れて900MHz帯の通信が利用できるようになり、ドコモやauと肩を並べるようになった。ソフトバンクはこの時「プラチナバンド」と大々的に宣伝したことは記憶に新しい。

 4Gの世界では周波数の違いによって、「つながりやすさ」にこのような状況が生まれていたのだ。

 ところで、5Gの周波数はどうなっているのか。

 総務省の発表によれば、3.6〜4.6GHz帯(Sub6)、27〜29GHz(ミリ波)となっている。これはソフトバンクに限った話ではなく、ドコモやau、楽天も含めて、この周波数帯を使用することになる。

 つまり、いくら5Gが爆速とはいえ、電波の特性上直進性が強く、言うなれば「昔のソフトバンクのような状態」になる。ソフトバンクがつながりづらかった当時、多くのユーザーが「つながりにくいから」という理由での解約や避けることが多かった。当時のソフトバンクは値下げ競争に必死でもあったが(今ではその影もないが)、安さというメリットがあっても、つながりやすさのウエイトは重かったのだ。

通信料金も対応端末も高くなる?

 課題はそれだけではない。ただでさえつながりづらい5Gなのだが、安くはない。プランによって異なるが、各社の5Gプランを見てみると、4Gの料金プランに比べてプラス1000円といった相場になっている。加えて、5G対応のスマホは、非対応に比べて値も張る。日本でももっとも高いシェアを誇るiPhoneは5G未対応でもある。

 そもそも5Gによってもたらされる恩恵もかなり微妙だ。超高速性といっても、4Gや光回線でNetflixやYouTubeの4K画質での動画は十分に楽しめる。遠隔医療や、嵐が出演するソフトバンクのCMで行われているような、大勢がネットワークでつながりながら歌を歌う体験などであれば5Gの恩恵を受けられるかもしれないが、はっきり言って今のところ一般人には関係のない話でもある。

 加えて、5Gにしないと楽しめない、キラーコンテンツ/キラーアプリも不在だ。キラーコンテンツが出てきたとしてもインスタグラムなどがそうであったように、超高速性などを生かしたコンテンツが出てくるには、5Gがある程度普及してからでないと、出てこないだろう。

 このように、ほとんど恩恵もないのに、通信料金も対応端末も高くなる。よほど新しいもの好きでなければメリットはないのだ。

課題が解消されるのは数年先

 ただし、今後5Gの普及は間違いなく進んでいくだろう。現在は限定されている対応エリアも、今後はじわじわと広がっていく。加えて、現在はまだ3G回線に使用されている帯域が、5Gでも使われるようになる。対応端末も増えていくだろう。現在は生産に高いコストがかかる5G対応のチップも安価になっていき、端末代金も抑えられてくる。すると、今のところ5G普及のボトルネックになっている、つながりやすさと値段の課題が解消されていく。

 だが、それは数年後のお話。じわじわ進んでいき、しかも利用者にとっては「いつの間にか変わった」くらいの変化になる。3Gから4Gになったときよりも地味なシフトチェンジになるはず。その頃には現在の4Gのようになっており、なんら真新しさはない。その頃には、「2時間の映画が3秒で見られる!」と感動していた頃の思い出はとっくに消えているだろう。

 よくスマホの買い替えを検討している人が「5G対応しておいたほうがいいのかな」と迷う姿が散見される。少なくとも、一般人である我々には今のところ関係のない話と思っていい。

「2時間の映画が3秒でダウンロードできる」「世界を変える!」などの耳心地の良いマーケティングに踊らされてはいけない。

(文=加藤純平/ライター)

加藤純平/ライター

加藤純平/ライター

1991年生まれ。鳥取県出身。大学在学中にライターとしての活動をスタートし、現在は、書籍や週刊誌のライティングを中心に活動。ITやビジネス、金融、さらには筋トレなど、幅広いテーマを手がける。
【担当した書籍】
堀江貴文『2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全』(徳間書店)
中島聡『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)

Twitter:@katopew