2017年10月から11月にかけて、LINEの「Clova WAVE」、米グーグルの「Google Home」、米アマゾンの「Amazon Echo」と、音声AIアシスタントを搭載する「スマートスピーカー」(AIスピーカーと呼ばれることも多い)がたて続けに登場した。LINEは今のところ独自路線だが、グーグルの「Googleアシスタント」、アマゾンの「Amazon Alexa」(どちらも音声AIアシスタントの名称)に対応するサードパーティー製のスマートスピーカーも登場しており、一気に注目度が高まっている。
手軽に楽しめる音楽スピーカーとして考えると便利
スマートスピーカーは音声でAIアシスタントを呼び出して、ニュースや天気予報などの情報を聞いたり、タイマーやアラームをセットしたり、インターネットで調べ物をしたり、対応する家電を操作したりできる。しかし実際に声をかけてみると「すみません、よくわかりません」といった応答があり、その先に進めないことも多い。現状ではまだまだ完成度はそれほど高くなく、あまり期待しすぎると失望してしまうだろう。
では何に使うと便利で、楽しめるようになるのか。最も注目されている機能の一つが「サブスクリプション型(定額制)音楽配信サービス」の利用だ。多くのスマートスピーカーはBluetoothを経由してスマートフォン(スマホ)などに保存した楽曲をワイヤレス再生できるだけでなく、さまざまな音楽配信サービスに対応している。
LINEの音声AIアシスタント「Clova」に対応する音楽配信サービス「LINE MUSIC」、米アマゾンの「Amazon Alexa」は「Spotify Premium」「Amazon Prime Music」「Amazon Music Unlimited」に対応。米グーグルの「Googleアシスタント」に対応する音楽配信サービスは「Spotify Free」「Spotify Premium」「Google Play Music」などといった具合だ。
主なスマートスピーカーが対応する音楽配信サービス
【米アマゾン陣営】
・Amazon Prime Music(年額3900円の「プライム会員」は無料)
・Amazon Music Unlimited(月額380円~)
・dヒッツ(月額540円)
・Spotify Premium(月額980円、学割あり)
【米グーグル陣営】
・Google Play Music(月額980円)
・Spotify Free(月額無料)
・Spotify Premium(月額980円、学割あり)
・うたパス(月額324円~)
【LINE】
・LINE MUSIC(月額960円)
たとえば「アレクサ、80年代ロックを再生して」と言えば、「80年代ロックミュージックを再生します」といったように応え、該当する音楽を再生してくれる。「ビリー・ジョエルを再生して」といえば、ビリー・ジョエルの楽曲に絞ってシャッフル再生してくれる。上記のサービスはスマホでも同様に利用できるため、外出先ではスマホ、自宅ではスピーカーでと、どこでも好きな音楽を好きなタイミングで楽しむことができる。
初期設定に手間取る可能性はあるものの、初心者でも使える
一度スマホで「Googleアシスタント」やiPhoneの「Siri」などの音声AIアシスタントを使ったことのある人なら、スマートスピーカーを使いこなすのに戸惑うことはほとんどないだろう。しかしスマホに専用アプリをインストールし、自宅のWi-Fi環境に接続するなど、初期設定は手間取る可能性がある。ここだけ乗り越えられれば、あとは快適に使えるはずだ。
まず便利なのが「タイマー」機能
では、どんな機能がオススメなのか。先ほど紹介した定額制音楽配信サービスもいいが、まずは「タイマー機能」だろう。
スマートスピーカーのタイマー機能が便利なのは、声だけでセットできるだけでなく、複数のタイマーを使える点にある。たとえば料理をしているときに、麺をゆでながら別の鍋でゆで卵をつくるといった場合もあるし、同時にお風呂を温めるといった場合もあるだろう。
そんなときに「ラーメンタイマーを3分でセットして」と呼びかけると、「ラーメン、3分ですね。スタート」(グーグル)、「3分のタイマー、『ラーメンタイマー』を開始します」(アマゾン)といったように設定し、指定時間後にお知らせしてくれる(LINEの場合はタイマーに名称を付けられないようだ)。
ラジオ好きなら「ラジコ」はかなり便利!
音楽配信サービスを利用する場合は月額利用料がかかる場合が多いため、ためらう人も多いのではないだろうか。そういう人にオススメなのが「radiko.jp(ラジコ)」によるラジオ機能だ。NHKは独自のラジオ配信を実施していることもあって、18年3月末までの期間限定配信なのは残念なところだが、それ以外の民放AM、FM局を網羅している。電波で受信するのと違って音質が圧倒的にクリアなのもうれしい点だ。
ラジコについては、アマゾン、グーグル、LINEのすべてが対応しているので、どれを選んでも大丈夫。ラジオ好きなら買って損なしといえる。
オススメはAmazon Alexa対応製品だが、購入にクセあり
アマゾンもグーグルもサードパーティー製品までそろっているため、どれを買えばいいのかわからないという人も多いことだろう。
そこでオススメしたいのがアマゾンの「Amazon Echo」(直販価格1万1980円)だ。
魅力はまず「音質」にある。純正のスマートスピーカー製品のなかでは最も音質がクリアで聞きやすいだけでなく、音声外部出力があるため手持ちのスピーカーに接続することもできる。ただし、最初から手持ちのスピーカーやオーディオシステムに接続したいのであれば、よりコンパクトで低価格な「Amazon Echo Dot」をオススメする。
アマゾンの場合、「Amazon Alexa」アプリを通じて対応する「スキル」と呼ばれる機能をオンにしたり、詳細設定したりする必要が生じる場合があるので、その点は注意してほしい。逆に言うと、使いたくないスキルをオンにしなければ呼び出されることはないので、誤動作に悩まされるということもない。ラジコで「J-WAVEをかけて」というと「J-WAVEですね」という割にラジオ日本をかけたりするお茶目(というかバグ)があるAmazon Alexaだが、日本語認識は日増しにアップしている模様。ちょっとした失敗に目をつぶれば、よりスマートな生活が待っているかもしれない。
アマゾン対応製品の場合、もうひとつ注意しなければならない点がある。それは購入が「招待制」になっているということだ。購入するためには「招待メールのリクエスト」が必要になり、招待メールが届いた人だけ購入できる仕組みになっている。アマゾンのWebサイトでは「数週間のうちに、招待メールをお送りします」と書いてあるが、かなり待たされている人も実際にいるようだ。ここが最大のネックではあるが、今のところ「コスパが良くてスピーカーとして高音質に楽しめる」という意味ではAmazon Echoに軍配が上がると筆者は考えている。
もちろん、Google Homeなども音質はAmazon Echoには劣るものの、Googleのさまざまなサービスを使えるという利点もあり、魅力は十分にある。Google Homeは発売以来、何度かセールも実施しているので、半額セールなどを見つけたらかなりお買い得なのでぜひゲットすることをオススメしたい。
(文=安蔵靖志/IT・家電ジャーナリスト)