アマゾンがスマートスピーカー「Amazon Echo(アマゾン・エコー)」一般発売を4月より開始した。2017年11月の発表当初は「招待制」として販売数量を絞り込んできたが、ようやくアマゾンのウェブサイトや家電量販店で誰もが買えるようになる。
その背景には、スマートスピーカーの性能が成熟するのを待つというアマゾンの判断があったという。果たして日本のスマートスピーカー市場はどう変わるのか。
海外では山積みだったアマゾンエコー
音声アシスタントが利用できるスマートスピーカーの市場では、アマゾンとグーグルが世界的なシェア争いを繰り広げている。日本市場では2017年10月にグーグルが「Google Home」を、11月にはアマゾンが「Amazon Echo」を相次いで発表したことは記憶に新しい。
だが、Amazon Echoの販売手法は「招待制」という不可解なものだった。予約が始まった直後に筆者も購入を申し込んだが、実際に買えたのは標準サイズのEchoのみ。小型の「Echo Dot」と大型の「Echo Plus」の招待状が届いたのは数カ月後のことだった。
商品の在庫がなかったわけでもないようだ。米国の家電量販店には商品が山積みになっており、ブラックフライデーから始まる年末商戦では最も売れた人気商品の1つだったといえる。
なぜ招待制を採用したのか。その理由についてアマゾンジャパンは、日本語の音声アシスタントの性能が低かったことを挙げた。そこから半年間、改善を繰り返し、一定のレベルに達したところで一般販売に踏み切ったという。まだ読み上げは不自然に感じる部分もあるが、徐々に改善してきた。
現時点で最も対応が進んでいる言語は英語だが、その次はドイツ語と日本語となっている。世界の言語のなかで日本語は2~3番目に優遇されていることから、アマゾンが日本市場を重視していることは間違いないだろう。
音声のアプリに相当する「スキル」も、日本向けのものが充実してきた。たとえばベネッセの「進研ゼミ」は、センター試験レベルの問題を出すスキルを提供しており、成績を全国のユーザーと競い合える。音声入力を多用する若年層に刺さるスキルだ。
スマホを使いこなせない人も取り込める可能性
Amazon Echoのインパクトは、単にスピーカーが高機能になるだけではない。IT機器の操作方法として、キーボードやタッチに加え、「音声」が使われる場面が増えることを意味している。そこで重要になってくるのが、その頭脳というべき音声アシスタントの「Amazon Alexa」だ。
Alexaを家電製品と連携すると、リビングに座ったまま音声でテレビをつけたり、ベッドに入ってから音声で照明を消したりといったスマートホームを実現できる。これくらいならリモコンでも十分だが、キッチンで手が離せない場面ならば便利なこともありそうだ。
アマゾン以外では、グーグルはAndroid端末に「Googleアシスタント」を搭載しており、家電製品の対応も急速に進んでいる。アップルの「Siri」はiPhoneやiPadで知られているが、米国ではスマートスピーカーの「HomePod」も登場した。
その目指すところは、音声という新しい操作方法を提供することで、日常生活のより多くの場面で、コンテンツや買い物といった自社のサービスを利用してもらうことにある。音声操作なら、スマホやPCを使いこなせないユーザー層を取り込めるとの期待もある。
だが、音声だけでは限界もある。長い文章を延々と読まれるとかったるく感じるのは事実だ。そこで注目したいのが、スマートスピーカーに画面を追加した「スマートディスプレイ」だ。地図の道順や料理のレシピなどは画面に表示したほうがわかりやすく、見返すのも容易だ。
米国でアマゾンは、画面を搭載した「Echo Show」や「Echo Spot」といったモデルを販売している。対するグーグルも、スマートディスプレイを規格として打ち出し、真っ向勝負を挑む構えだ。音声アシスタント競争の次なる主戦場として、日本市場に上陸する日も遠くなさそうだ。
(文=山口健太/ITジャーナリスト)