矢野経済研究所が4月20日に発表したプレスリリースによると、有機ELディスプレイを採用した「Foldable(=折りたたみ式)スマホ」の世界出荷台数は、今年の9万台という見込み値から、2020年には90万台にまで跳ね上がると予測されている。
折りたたみ式スマートフォン(スマホ)は、本体を広げた状態では大画面のタブレットとして使うことが可能。さらには画面を左右2つに分け、別々のアプリケーションを表示させるという使い道もあるのが特徴だ。
一方、本体を折り曲げれば通常のスマホと同じサイズになり、片手で操作することもできるため、そのマルチな用途には期待が高まるところだろう。各メーカーが開発を進めており、早ければ年内にも韓国サムスン電子が製品化を果たすといわれている。
もっとも、広げたり折り曲げたりの繰り返しに耐えられるだけのディスプレイ強度を実現できるかどうかなど、まだ課題は多いという。しかし、そこさえクリアできれば、折りたたみ式スマホが次世代の主流になっていく可能性もあるだろう。そこで、その将来性などについて、ケータイ/スマホジャーナリストの石川温氏に話を聞いた。
折りたたみ式は正統進化ではなく、あくまで派生進化
まず、折りたたみ式スマホのメリットと、業界内でどのような立ち位置になりそうかを解説してもらおう。
「本体を折り曲げられるということは、それだけ大画面のスマホを持ち運びやすくなりますので、かなりのメリットだと思います。タブレットPCくらいの画面サイズがある端末を、今よりもコンパクトに携帯できれば、外出先で動画を見たり、電子書籍を読んだりするのに非常に向いているでしょう。情報量の多い新聞や雑誌など、これまでは広げて読まなければならなかったものが、折りたたみ式スマホというかたちでポケットに収まってしまうのは魅力的な話です。
とはいえ、折りたたみ式は、従来のスマホが正統的に進化したというよりも、派生的に進化したものだと認識したほうがいいかもしれません。なぜなら、現在の一般的なスマホにおける“片手で持って親指で操作する”という使い勝手は、すでに完成されているからです。
折りたたみ式は、ずっと慣れ親しんでいた通常のスマホよりも端末が重くなったり、バッテリーの持ちが悪くなったりと、大画面であるがゆえのデメリットが生じてしまう可能性があります。消費者のスマホ選びの幅を広げてくれる存在になりそうですが、あくまでも“おまけ的”な進化にすぎないというのが私の印象ですね」(石川氏)
なお、2つの画面を備え、1つの大きな画面に見立てられるスマホは、過去にも例があった。その機種の反響を、石川氏は次のように振り返る。
「2013年、NTTドコモから『MEDIAS W N-05E』という2画面のスマホが発売されましたが、決してヒットすることなく、後継機種も出ずに終わりました。パッと見では最先端の機種に思えても、実際に使ってみると不便な点がいくつもあったということです。そもそも、当時はAndroidというOS自体が2画面向けにはつくられておらず、『MEDIAS~』においても、操作性が特殊になってしまうというハンデがありました。