しかし、この流れに日本のスマホメーカーが乗るとは考えにくい。なぜなら、現時点ではソニーモバイル(以下、ソニー)を除く各社は、サムスンやアップル、Googleのような世界に向けた端末ではなく、国内市場に向けて端末をつくっており、わざわざSIMフリー端末を売り出せば、通信キャリアに睨まれて日本国内のビジネスが行き詰まる可能性もあるからだ。これはソニーにも同じことがいえる。Xperiaシリーズの国内販売が極めて好調なソニーにしてみれば、そんなリスクを冒す必要はない。
恐らくは現在のサプライヤーが今後、しばらく日本のSIMフリー市場の主役となるだろう。そんな中、大きく進化する可能性を持っているのがMVNOだ。これは日本通信やIIJのように、自社網を持つキャリアから回線を借りて、自社名義の通信サービスを提供する業者のことだ。
SIMフリー端末が売れれば、その端末を使うための通信サービスが利用されるのは当然であり、これらの業者の業績は今後、着実に上昇していくことが予想される。実際、ここにきて、このSIMフリー端末向けの低価格サービスの競争は激化してきている。「SIMフリー端末って、海外で現地のSIMを使うためのものなんじゃないの?」と思う向きもあるかもしれないが、そんな使い方をするユーザーはわずかで、多くはスマホの利用料を安くするために活用しているのだ。
エクスパンシズの関係者によれば、現在売れているSIMフリー端末はマニア向けの高機能端末ではなく、リーズナブルな価格のXperiaの中級機だそうだ。
普及とともに、今後、SIMフリーはより低価格な端末が注目されることになるだろう。
そして、海の向こうでは最近、モトローラからMoto Gという低価格なスマホがリリースされ、エクスパンシズなどでSIMフリー版の販売が開始された。この端末は通信規格としては高速なLTEには対応せず、3G通信となるのだが、CPUはクアッドコアで実用十分な性能を持っている。さらに価格は、12月20日現在、エクスパンシズで2万2615円(円ドルレートで価格は変動する可能性あり)とリーズナブルだ。今後、かなりの売れ筋となることだろう。
また、エクスパンシズでほかの機種としては、Windows Phoneなどのローエンド端末もリーズナブルで「Nokia Lumia 520」などは1万円台前半だ。ちなみにNexus 5は16GBタイプがGoogle Playで3万9800円だ。
今後、日本国内では低価格なSIMフリー端末と通信サービスによって、リーズナブルにスマホを使いたい層が広がっていくのは間違いない。そして、その潮流がビジネスの上でも活性化していくことだろう。
(文=一条真人)