●キャリアの広告宣伝の現状と嘘
まず中野氏は、「基地局数や保有周波数だけでは、キャリアの通信品質は語れない。広告戦略として利用しているだけ」と明かす。
例えば、最近のKDDIの広告では、LTEエリアの拡充と共に「800MHzプラチナバンド」の広告が目立つが、これについて中野氏は次のように疑問を投げかける。
「実はauの携帯電話やスマートフォン(スマホ)は仕様上800MHzよりも2.1GHzを先につかんでしまうのです。だから、実際にプラチナバンドの電波が届いていても、2.1GHzで優先的につながってしまうことが多い。なぜ2つの周波数帯があるのかというと、元々は800MHzでサービスが始まったものの、都市部を中心としたユーザーが多い地域で電波が足りなくなるという問題が生じました。そこで別の帯域を確保する必要が出てきました。
しかし、古い端末は800MHzしか掴まないため、それでは2.1GHzの電波を出しても何も変わらない。そこで新しい機種は優先的に2.1GHzを掴むことで800MHzの混雑緩和を図ったわけですが、現在は800MHzしか掴まない古い機種はほとんど使われていません。つまり、『KDDIはプラチナバンド』と盛んに宣伝しているものの、実は都市部だとほとんどのケースでプラチナバンドではない2.1GHzで通信しています。
たしかに2.1GHzの電波が届きにくい場所は800MHzで補完されるので無意味とは言いませんが、2.1GHzから800MHzに落ちる時に『ハードハンドオフ』という通話中に激しいノイズが入ったり、数%くらいは800MHzから2.1GHzへの移行を失敗します。KDDI社内の技術部門では皆それを知っています。
さらに最近はLTEは2.1GHzしか掴まない機種もある。そうすると800MHzでしか展開していない地方では使えない。そこで起きた事件があのiPhoneのエリア偽装問題です。
利用者にはこういった話は教えないで都合のいいことばかりを言う。それに私は大きな疑問を感じるのです。もっとも教える以前に営業や広報はこういうことをまったく知らないですよ」
それに、800MHz帯を使うのはKDDIだけでなく、ドコモ、ソフトバンクでもLTEではないがプラチナバンドを提供している。プラチナバンドは決してKDDIだけのものではない。
今回中野氏の話を受け、筆者はどのバンドの電波で通信しているのか検証しようとしたが、基地局の情報は非公開であるため、実際に2.1GHz帯、800MHz帯の双方が受信できる環境で検証を行うことはできなかった。
ただし、どの周波数帯で通信しているかは、iPhoneの「メンテナンスモード」という特殊なモードに切り替えることで確認できる。このモードで色々と調べてみると面白い。このモードを使う時はWi-Fi接続をオフにしておく。
確認方法は簡単だ。「電話」アプリの「キーパッド」で「*3001#12345#*」と入力して「発信」をタップすると「Field Test」という画面が表示される。「Saving Cell Info」をタップすると情報が表示される。情報を表示するだけでホームボタンを押せば元に戻るので、安心して試せる。