しかし自分の腕の長さ分だけで撮影すると、構図はやはり貧しくなる。顔が画面いっぱいになるばかりで、背景と一緒に収めた記念写真的な撮影は難しい。それを解決するアイテムとして登場したのが「自撮り棒」だ。「セルカ棒」などと呼ばれることもある。
シャッターを押してくれる人がいなくても、良い写真が撮れ、手持ちでは無理な構図の撮影もできるとあって大人気だが、その人気ゆえに最近では規制の動きが広まってきている。
棒を振り回す迷惑行為が規制対象に
自撮り棒の迷惑行為として挙げられるのは、棒を振り回す行為だ。これが人のいない場でならば大きな問題にはならないだろうが、美術館やスポーツ観戦、遊園地などの人が多い場で棒を振り回されて危ないという点が問題視されている。
子供がするように棒をぶんぶんと振る人はいないだろうが、人混みの中で長い棒を伸ばされれば、真っすぐ出して引っ込めるだけでも邪魔になる。
また、人混みの頭越しに写真を撮るといった使い方も多い。中には動物園で柵から身を乗り出し、動物の近くまでカメラを突き出して撮影するような非常識な人もいるようだ。さらには電車好きな人が線路まで棒を伸ばして電車の正面から写真を撮り、運行に支障を来すという迷惑行為もあった。
ディズニーランドでも利用禁止に
海外では、美術館やスポーツイベント等で禁止の場が増えているという。4月にはテニスのウィンブルドンでも利用禁止が発表された。日本でも、東京ディズニーリゾートが利用禁止を発表し、話題になった。シンデレラ城を背景にしての自撮り、人垣を越えてパレード撮影など、利用したくなる場面は多いが、そもそも持ち込みが許されていないのだ。
東京ディズニーリゾートは、もともと三脚などの持ち込みも禁止している。ほかにも、写真撮影自体は可能だが、三脚などの補助器具は利用不可という場所は少なくない。三脚を広げれば1人分以上のスペースを占有し、後ろにいる人の視界を塞ぐため、邪魔というのがその主な理由だ。パレードや運動会を見ている人にとって、視界を遮るように棒を振り回されればストレスがたまるところだろう。
邪魔にならない使い方を心がけよう
こういった規制は、なかなか最初の一歩は出ないが、いったんどこかが禁止すると、一気に広がるものだ。安全で周りに迷惑をかけないマナーが定着すれば、多少は規制が緩和されるようになるのではないか。
具体的には、まず人混みの中で使わないということだろう。例えば、花火大会や祭りなどは、場所によっては満員電車のような混み具合になる。そんな中で立ち止まって写真を撮ること自体が迷惑行為だ。また、人垣を越えて撮影したいのならば、まず人垣の後ろまで移動し、誰の視界も遮らない場所で撮影すれば迷惑に思われることもないはずだ。
ある程度広い場所で使う場合も、周囲に人がいないことを確認して、ゆっくりと動くようにしたい。安価な自撮り棒はリモートシャッター機能がないため、セルフタイマーをセットして時間内に構図を決めなければならず、慌てて振り回すようなことになりがちだ。これから購入する人は、リモートシャッター機能つきの製品を選ぶといいだろう。また、有線接続は面倒なので、Bluetooth対応のものがオススメだ。
自撮り棒を使用する際の最大のポイントは、空気を読むことだ。周囲をよく見回し、今ここで使っても誰かの迷惑にはならないかを考慮するようにしよう。
(文=編集部)