財政再建が国家的課題となる中で今月18日、ようやく行政改革推進会議が少し前向きな薬代の抑制策づくりを盛り込んだ中間報告を取りまとめた。厚生労働省が掲げていたジェネリック(後発)医薬品の普及目標(2020年度に80%)の3年前倒しでの実現を求めたもので、安倍晋三首相も行革会議議長として内容を了承した。割安なジェネリック医薬品は、特許が切れた新薬と同じ成分を使って開発・販売されるため、高齢化に直面する先進国にとって薬代節約の決め手のひとつ。その普及前倒しは方向性では正しい政策といえる。
しかし、中間報告には生温くて中途半端な部分もある。米国では新薬の10分の1以下が当たり前とされている一方、日本では同4割安程度の高値に設定されているジェネリック医薬品の価格引き下げについて、「適正な水準でなければ患者はメリットを感じられず、医療費削減効果も限られてしまう」との考え方を述べただけ。引き下げの具体的な数値目標を示せなかったのだ。
率直にいえば、これまでの多くの規制改革議論と同様に、総論は立派だが効果の出ない「やったふり改革」で終わらないか、不安が残る内容なのである。
まず、5月以降、関係業界や医師、薬剤師などの団体が行革会議の歳出改革ワーキンググループ重要課題検証サブ・グループ(以下、検証サブG)に提出した資料から、ジェネリック医薬品の実情を浮き彫りにしよう。
10年を例にとると、各国におけるジェネリック医薬品のシェアは、米国の91%を筆頭に、ドイツ82%、英国73%、フランス62%に対し、日本は20.28%(旧計算方式。新計算方式で遡って計算し直すと35.8%)と大きく後れをとっている。
ちなみに、厚生労働省は07年度に事態改善のため目標を策定し、「12年度末までに普及率を30%以上」にするとしていたが、未達に終わった。そこで、同省は13年4月に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を公表し、20ポイント前後も普及率が上がったかのように見える新しい計算方式を導入したうえで、18年3月末までに60%以上という目標を掲げ直した。そして、さらに5月26日の経済財政諮問会議で、新たに「20年度に80%」という目標を掲げたばかりだった。しかし、行革会議はさらなる上積みが必要として、「17年度に80%」を実現するように迫ったのである。
最大の問題点
これまでジェネリック医薬品の普及が進まなかった原因については、利害関係者によってさまざまな言い分があるが、客観的に見て最も大きな理由は、欧米の先進諸国では安さが売りもののジェネリック薬品の価格が、日本では高止まりしていることに尽きる。