前述の検証サブG委員の中には、図らずもそのことを看破した人がいたらしい。事務局が今月5日の同G会議に提出した「これまでのヒアリングで出された主な意見」という資料の中に、「後発医薬品の価格は高過ぎる。もっと下げないと、国民にとってのメリットや医療費削減の効果は出て来ない」「後発医薬品の新規の薬価は先発医薬品の6掛け、これをもっと下げていいのではないか」といった意見があったことが記録されている。これこそ13年7月30日付現代ビジネス連載記事などで筆者が繰り返し指摘してきた、日本のジェネリック医薬品における最大の問題点のひとつなのだ。
筆者は当時、世間を騒がせていたスイス系製薬大手ノバルティスファーマの「降圧剤ディオバン」(一般名「バルサルタン」)」臨床試験における論文データ捏造事件の背景に、この問題があったこともリポートした。同社は、特許切れが迫っていた稼ぎ頭のディオバンの売り上げをジェネリック医薬品に奪われないために、発売当初にお墨付きを得たものとは異なる効能があるという臨床試験データをでっち上げて医療雑誌などに情報を流すことで、従来通りかそれ以上の売り上げを確保しようとしていた。
残念なことに今回行革会議は、日本のジェネリック医薬品の価格が高止まりしているというところで思考停止してしまった。さらに踏み込んで、なぜジェネリック医薬品の価格が高止まりしているかを検証しようとしなかったのだ。冒頭で触れた中間報告をみても、高止まりを許す構造問題の存在や、具体的な引き下げ幅の数値目標といった事柄に踏み込んだ言及がみられない。
では、なぜ日本のジェネリック医薬品の価格は下がらないのだろうか。問題の根源は、諸外国と違い厚労省が開発から間もない新薬の薬価を低く抑え込んでいることにある。画期的な新薬を安く購入できるのは患者にとって朗報に思えるが、実はそうとは言い切れない。というのは、製薬会社が巨額開発費を特許が有効な間に回収できないため、特許が切れても値崩れしないように、同省がジェネリック医薬品の薬価を高めに設定せざるを得なくなるからだ。
この結果、諸外国と比較して日本ではジェネリック医薬品が高止まりする仕組みができ上がっているのだ。見方を変えれば、画期的な新薬の価格が米国のように高騰しない代わりに、いつまでたっても薬の値段が下がらない構造が日本では定着してしまったのである。
患者にとっても深刻な問題
しかもこの仕組みは、製薬会社が巨額の開発費を投入して販売にこぎ着けたとしても採算がとりにくいという弊害を生んでおり、日本市場を特殊なマーケットにしている。これは、製薬会社だけでなく患者にとっても深刻な問題だ。
今後、外資系はもちろん国内医薬品メーカーでさえ、日本への新薬投入を欧米に比べて後回しにしたり、日本ではまったく販売しないといった経営判断を下すことにつながりかねないからだ。そうなると最先端の新薬を使った治療を受けたい患者は、自費で海外渡航し治療を受けるしか選択肢がない、つまり一握りの裕福な患者しか最先端の医療を受けられないという事態が起こり得る。