スポンサーに起用されたANAは、自社の発券システムをスカイマークに採用させる方針だ。このため、スカイマークは顧客情報を自社で蓄積できなくなり、将来の自立の道が閉ざされてしまうという。
そんな中で、イントレピッドが不満を爆発させた。弁済額が少ないうえ、スカイマーク機のリースを引き継ぐという口約束をANAが反故にしたことで、イントレピッド自身の存立基盤が揺らいでいるからだ。そして、デルタをANAの対抗馬に担ぎ出し、独自の再建案を持ち出す事態に至った。
今回のように、2つの案が真っ向から対立して再建策を一本化できない事態に至った背景には、ビジネスや経営を知らない弁護士に多くを依存する民事再生手続きの制度的、構造的な欠陥がある。だが、そうした多くの問題を割り引いても、スカイマークの再建計画はすでにスポンサー間や新たな株主間の利害調整が終わり契約が成立している。新たな役員人事も固まった。時間が節約できるだけではない。金繰りの面でも、三井住友銀行や政策投資銀行といった大手金融機関の資金支援を期待できる状況が整っており、8月の債権者集会でイントレピット案を抑えて了承を得ることさえできれば、2次破綻を回避できる可能性が出てくるはずだ。
デルタの悲願
デルタにとって、日本に橋頭堡を築くことは悲願だった。エド・バスティアン社長は米国時間の15日に行われた業績発表の席でも、「長い間、日本の提携先に関心を持っていたが、今回は絶好の機会。出資について債権者と話し合っている」と強い意欲を示した。
デルタが、2010年に破たんしたJALと提携し、米アメリカン航空や英ブリティッシュ航空が主宰する国際航空アライアンスのワンワールドからJALを引き抜き、デルタ主宰のスカイチームに移籍させようと試みたものの、JAL再建の陣頭指揮を執った稲盛和夫氏に拒否された話は有名だ。
13年秋に行われた羽田の国際線発着枠の配分では、デルタが国交省にいきなり25枠という突出した枠の提供を迫った。話し合いはこじれ、羽田と米国を結ぶ8~9枠は今なお宙に浮いたままだ。
スカイマークの再建支援策に目を移すと、デルタはマイレージ制度や収益管理システムの導入をサポートするほか、共同運航、機体整備、出資などの協力を検討するとしている。だが、15日にイントレピッドが公表した計画案をみると、いずれも確約したのは「検討」にすぎない。これから利害調整に長い時間がかかるのは確実だろう。
また、現在スカイマークが就航している空港でデルタも乗り入れているのは、羽田、中部、福岡の3空港だけ。便数もわずかだ。国際線を持たないスカイマークと、国内線に参入できないデルタが、共同運航や機体整備の協力で実効をあげるのは容易ではない。