元従軍慰安婦の支援を目的に韓国で設立された「和解・癒やし財団」が正式に解散したことが判明した。日本の同意を得ないまま解散に至り、使途不明の支援金も多く残されているとあって、日本政府は早くも韓国政府に抗議したことも報じられている。
同財団は、2015年12月に行われた日韓外相会談で締結された日韓合意に基づき設立された。日本側が10億円の予算を拠出し、朴槿恵政権時に元慰安婦に支給されていた。ところが、17年に日韓合意に懐疑的な見方を示す文在寅政権が誕生し、18年11月には韓国政府が財団を解散する方針を発表。河野太郎外務大臣が臨時会見で「日韓合意は外相間で協議を行い、直後に首脳間でも確認し、韓国政府としての確約を取りつけたものであり、たとえ政権が変わったとしても責任を持って実施されるべき」と反発していた。
同財団は日本側の同意がないまま解散手続きが進められ、7月3日に登記上の解散手続き完了の通知を受け取ったという。しかし、日本が拠出した10億円のうち約5億円が支給されないままとされており、解散によって宙に浮いてしまうことになる。今後は、残余金の使い道をめぐっても議論が過熱しそうだ。
7月5日に記者会見を行った西村康稔官房副長官は、「日本政府として到底受け入れられない。韓国側に我が国の問題意識について強く申し入れを行った」とすでに抗議したことを明らかにし、「引き続き日韓合意の着実な実施を強く求めていく」と述べている。
財団解散の報道を受け、インターネット上では韓国に対する批判が噴出。「また約束破った。もはや国家間合意すら成立しないってどういうこと?」「これで5億円持ち逃げですね」「日本に甘えすぎ」「国交断絶の可能性も含めて日本政府は猛抗議すべき」などの声であふれ返っている。
慰安婦や元徴用工の問題をめぐり、日本と韓国の関係は史上最悪の状態ともいわれている。6月28、29日に大阪で開かれたG20サミット(20カ国・地域首脳会議)では、安倍晋三首相と文大統領は出迎えの際に視線を合わさず数秒握手しただけで、首脳会談どころか略式会談さえ見送られた。
7月1日には、経済産業省が半導体材料の対韓輸出規制を強化することを発表した。日本が世界的に高いシェアを誇るフッ化ポリイミド、レジスト、エッチングガスの3品目の輸出が規制されることで、サムスン電子やLGエレクトロニクスなど韓国の主要企業は大打撃を受けることが必至とされている。また、韓国は外国為替及び外国貿易法(外為法)の優遇制度「ホワイト国」からも除外される見込みで、日本政府は異例の厳しい対応を採っている。
これらは元徴用工裁判をめぐる日本側の“報復”ではないかとの指摘もあるが、世耕弘成経済産業大臣はツイッターで「韓国との信頼関係が著しく損なわれたことによる、輸出管理上の措置」とコメント。一方で、韓国政府は世界貿易機関(WTO)への提訴を検討しているとされ、対抗措置の応酬という悪循環が日韓関係のさらなる悪化を招きかねない状況だ。