「少子高齢化が進み、あらゆる産業の国内市場が縮小していく中で、疲労回復・癒し関連ビジネスは確実に拡大しています。アスリートからビジネスパーソン、高齢者、主婦に至るまでターゲットは幅広い。あるシンクタンクは、07年度に4.9兆円だった市場規模は20年度には12兆円に膨らむと推計しています」(経済ジャーナリスト)
それだけに、メディア関係者の注目度は高い。
9月2日、東京・大手町で特許繊維を使った独自のリカバリーウェア商品で急成長を続けているベネクスの新商品発表会があった。従業員19人というベンチャー企業の発表会にもかかわらず、60人を超す報道関係者が集まった。
「着るだけでマッサージする、世界初のリカバリーウェア」という触れ込みの新商品は、「リチャージPro」(半袖:税込1万9440円、長袖:2万1600円、パンツ:2万1600円)。年間5000着の販売を目指す。
ナノプラチナなど、数十種類の鉱物を練り込んだ特許繊維(PHT)を波打つように編み込んだ「クラスターファブリック」という生地を開発し、肌に触れる面に凹凸を施した。その凹凸が肌をやさしく揉み、刺激を与えるといったマッサージ効果を発揮する。指や掌で軽くさする軽擦法にあたる。糸を編む時の生地の締め付け具合に強弱を付けることで、着用した際に姿勢が良くなるような“アライメント機能”(体の補正)を加えた。PHTが発する電磁波に加えて、軽擦法による皮膚へのやさしい刺激、アライメントによる正しい姿勢・呼吸の3つの作用が副交感神経を優位にし、疲労回復へ導くという。
開発にあたっては、森本貴義氏(株式会社リーチ専務)の協力を仰ぎ、実に7回も試作した。現在、同氏がトレーナーとしてかかわっている米メジャーリーグ、シアトル・マリナーズのフェリックス・ヘルナンデス投手もベネクス製品を愛用しているそうだ。
ベネクス社長の中村太一氏が25歳で設立して10年。大学の研究者や町工場の技術者らと共同研究を繰り返し、日本発の特許繊維開発に成功した中村氏は、次々と意欲的な商品を世の中に送り出している。産学公連携で誕生したリカバリーウェアは、09年1月発売以来、25万着を販売した(15年2月末現在)。世界最大のスポーツ見本市「ISPO」の商品コンテストで日本企業初の最高賞「ゴールドウイナー」を獲得するなど、世界的にも注目を集めている。国内10校や海外校から共同研究の依頼も相次いでいる。