9月2日の拙稿『病院、災害時の脆さ露呈…耐震化率、大阪や京都は6割台 非常用電源なしも一定数』で、災害時に病院が機能するのかを厚生労働省のデータを基に検証した。今回はその続きとして、学校が避難所として機能するのかを検証する。
災害が発生した際に人命を助ける大きな役割を担うのは病院だが、被災者が身を寄せるのは避難所だ。避難所として思い浮かべるのは、公民館や自治会館などだろうが、文部科学省の「東日本大震災における学校等の対応等に関する調査研究報告」(以下、調査研究報告)によると、東日本大震災では小学校、中学校、高等学校の約4割が避難所として、その他(特別支援学校など)を含めた30.6%の学校等が避難所として利用された。
文科省では2019年4月1日現在の避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査を実施、8月28日に公表した。調査対象は全国の公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、 特別支援学校の3万3285校で、このうち避難所に指定されている学校数は3万349校(91.2%)だった。
調査研究報告によると、自治体などの防災担当部局との連携や協力体制を構築していなかったことで、東日本大震災時に避難所となっていながら、防災担当部局が避難所として認識していなかったことで、支援が遅れた学校があったと指摘されている。さらに、学校が避難所として利用される場合に、学校施設の利用計画を立てていなかったことで、混乱を招く原因となったとの指摘もあった。
今回の調査では、95.8%が自治体などの防災担当部局との連携や協力体制を構築している半面、学校施設の利用計画を策定している学校数は避難所に指定されている3万349校のうち1万5571(51.3%)にとどまっており、課題を残している。
筆者が東日本大震災の被災地にボランティアに出向いた際には、避難所でもっとも問題となっていたのは、トイレの問題だった。水道が通っていなかったことで水が不足し、給水車による水の配給は飲料水に利用するため、トイレの水を川に汲みに行った経験がある。友人のボランティアは、「備蓄が少なかったため、毛布が不足して体育館の冷たい床に新聞紙を敷いて寝ていた。ガスや電気がないので、加熱調理ができず、食事は冷えたものばかりだった」と語っている。
調査研究報告でも、避難所の運営で不足・不具合等問題となった施設・設備として、「トイレ」(74.7%)、「暖房設備」(70.3%)、「給水・浄水設備」(66.7%)が挙げられている。今回の調査でも、備蓄倉庫、飲料水、非常用発電機等、LPガス等、災害時利用通信、断水時のトイレの機能について調査が行われており、その結果は以下のようになっている。
やはりと言うべきか、仕方ないことと諦めるべきか、病院とは違い、学校は災害の避難所として十分な防災機能を備えているとはいえない状況だ。それでも、日本は災害大国であり、地震のみならず、近年では集中豪雨による水害も多い。学校には避難所としての十分な防災機能を整備する必要があるだろう。なお、参考までに都道府県別、防災機能別に学校の防災機能の状況を以下に付け加えておく。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)