災害が発生した際に、何よりも人々が頼りとするのは、救命救急を行ってくれる病院の存在だ。もし、災害時に病院が機能しなければ、救えるはずの被災者が命を落とす可能性もあり、被害が拡大する恐れもある。こうした事態を極力回避するため、厚生労働省は病院の耐震性などについて調査を行っている。果たして、日本の病院は災害時に機能するのか――。
震災と言われて思い出すのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災だろう。厚生労働省の調査によると、岩手県、宮城県、福島県の合計380の病院のうち、10の病院が全壊し、290の病院が一部損壊した。当時でも、病院の耐震性については厳しく指導されていたが、それでも10病院が全壊する状況だった。
こうした状況を踏まえて、政府は「国土強靱化アクションプラン2015」で、2018年度までに災害拠点病院及び救命救急センターの耐震化率を 89.0%とする目標を定めた。7月31日に厚労省が発表した「病院の耐震改修状況調査の結果」によると、対象になる全国の8383病院のうち、回答を得られた8362病院で、耐震化率は74.5%となった。このうち、地震発生時の医療拠点となる災害拠点病院及び救命救急センターの耐震化率は90.7%となり、国土強靱化アクションプランの目標となっている89.0%を達成している。
ただ、耐震化の状況は、すべての建物に耐震性のある病院が6231(74.5%)、一部の建物に耐震性がある病院が664(7.9%)となっている一方、すべての建物に耐震性がない病院も123(1.5%)あり、さらに、建物の耐震性が不明である病院(耐震診断を実施していない病院)も1344(16.1%)あり、まだまだ万全の状態とはいえない。
一方、地震発生時の医療拠点となる災害拠点病院及び救命救急センターでは、742病院のうち、すべての建物に耐震性のある病院が673(90.7%)、一部の建物に耐震性がある病院が64(8.6%)であり、すべての建物に耐震性がない病院はゼロとなっている。ただし、建物の耐震性が不明である病院(耐震診断を実施していない病院)が5ある。都道府県別に見た場合、秋田県、山形県、群馬県、富山県、石川県、福井県、長野県、静岡県、滋賀県、和歌山県、徳島県、香川県、高知県、長崎県、宮崎県 の15県の災害拠点病院及び救命救急センターは100%で耐震化が実施済となっている。