再開発プロジェクトにかかわる人事面をみても、国交省の影響力は色濃く表れている。和歌山市駅前再開発の“源流”となった「2030わかやま構想」が策定されたのは13年3月のこと。それに先だって、13年1月から3回にわたって開催された地元の経営者や大学教授などの有識者6名で構成される「まちなか再生会議」の委員長には、和歌山県出身で元国交省事務次官の谷口博昭氏(当時の肩書は芝浦工業大学院教授)が就任している。
谷口氏は、民主党政権が誕生した09年に事務次官に登用された。かつて「道路族のドン」とも呼ばれていた実力者だ。実務面では、市長選出馬のため県庁を退職した尾花氏の後任として県土整備部長には、国交省から派遣された石原康弘氏が13年に就任している。
県庁サイドで和歌山市駅再開発を担当する都市住宅局では、これまた国交省からきた皆川武士課長が難しい再開発事業の全体計画を差配していたといわれている。
同氏は、18年11月1日付当サイト記事『和歌山市、公募前に他県のツタヤ図書館視察で疑惑浮上…市の担当者は「記憶にない」連発』でも詳しく報じたように、調整会議が始まって半年もたたない14年11月に、官民合わせた会議の構成メンバー総勢15名が佐賀県武雄市を視察に訪れていたメンバーのひとりだ。15年7月に石原部長とともに国交省に帰任するとき、地元メディアに「皆川課長は、和歌山市駅の再開発に道筋をつけました」と報じられたキーパーソンである。
国交省のある関係者は、こう解説する。
「再開発事業は、かつては県が担当していましたが、今は市町村が前面に出るようになりました。国の方針で、再開発事業全体に補助金をつけるようになっていて、その点で自治体の自由度は高いのですが、市には制度がわかる人材があまりいません。一方で、県はもともとその力があったので、市をサポートするかたちで、今は事業に参画していることが多いんです。国交省の人事交流は、市のレベルではあまりありませんが、県庁なら双方向であります。国交省の人間は現場を知らないとできないし、自治体は制度を知らないとできない。制度は毎年のように変わるので、国からの人材は重宝されると思います」
最近の中央官庁と民間との人事交流は「双方向」だという。国からの“天下り”があれば、逆に、民間からの“天上がり”もあるという意味だ。
下の図の「民間から国への職員の受入状況(平成28年10月1日現在)」をみると、国交省の住宅局は31名の民間人材を受け入れており、その出身企業一覧のなかには「アール・アイ・エー」という文字がクッキリと印字されている。
また、国の政策を決定する各種検討会議の委員にも、RIAの経営陣が名前を連ねている。巨額の税金が投入される公共工事の世界は、政・官・財のつながりによって動いていることがよくわかる。