先月16日に開かれた国際原子力機関(IAEA)総会での論争に続いて、第2ラウンドが始まりそうだ。韓国政府は環境NGOグリーンピースと連携することになったという。同国政府は7日から、ロンドンで開催される国際海事機関(IMO)本部で開かれる「ロンドン条約・議定書締約国会議」で、東京電力福島第1原発事故にかかる汚染処理水の問題を加盟国に広く周知し、議題にする方針を示した。韓国聯合ニュースが明らかにした。
グリーンピースと協力?
福島第1原発構内には、原子炉冷却などに使われた汚染水を多核種除去設備で処理した水約120万トンがタンクで保管されている。この処理水には高濃度のトリチウムが含まれているのだが、この処分方法に関しては何も決まっていない。だが、韓国政府は日本が海洋放出することを前提に議論を提案する模様だ。
ロンドン条約会議は廃棄物の海洋投棄禁止に関する各国の実施方針を議論してきた。今回の会議では議題に「放射性廃棄物の管理」が含まれているという。そこで同国政府はグリーンピースに白羽の矢を立てたという。
同報道によれば、「韓国政府は国際環境保護団体のグリーンピースと連携し問題提起を行う。グリーンピースは福島原発の汚染水の海洋放出計画に対し懸念を表明し、日本政府への質問書を提出する予定だ」という。また、同国政府関係者が「日本側に原発汚染水の処理に関する透明な情報共有を要請し、会議で同問題を持続的に協議する必要があると強調する」と述べたという
福島の汚染水処理の問題では「福島以外の原発、他国の原発でも国際基準にかなった汚染処理水を海洋放出している。なぜ日本だけ批判されなければならないのか」という指摘が多いが、グリーピースは全世界の原発の汚染水放出に一貫して反対の立場だ。当然、日本だけではなく老朽化し安全性の問題が指摘されている韓国・古里原発の運転差し止めを求める運動も主導している。
あくまで情報ベースの連携
韓国政府がどのような持論を展開するのか不明だが、いわゆる「ブーメラン」にならないのか。グリーンピースジャパンエネルギーチームで福島第一原発事故問題を担当している鈴木かずえ氏は次のように説明する。
「日本政府の廃炉・汚染水対策の会議の模様などを英訳して情報提供したり、ヒアリングに応じたりする活動を従前から行っています。韓国のみならずこの問題に関心のあるすべての国を対象に行っています。今回の会議でも韓国政府と共同でアクションを起こすというわけではなく、あくまで情報ベースの連携です。グリーンピースは政治的な中立と、政府からの独立を掲げたNGOです。
ロンドン条約会議には1990年代から、参加各国とは一線を画した第3者的な立場で出席しています。福島の汚染水の海洋放出に関しては、グリーンピースとして意見表明します。
福島に限って言えば福島原発構内や周囲の中間貯蔵施設建設予定地に汚染水タンクを増設する余地があります。早急に汚染水を海洋放出しなければならない理由はないと考えています。他国の原発が排出しているから良いというわけではありませんし、そもそも原発からの排水そのものに反対です。日本は事故当事国として、また世界有数の環境技術立国として最善の方策を取る必要があります。
ロンドン条約で禁止されているのは、船による海洋投棄です。福島のように陸地に設置した排水路やパイプを使う汚染物質の排出は条約の対象外です。私たちとしては、条約の精神に則り、こうした投棄を禁止することを求める考えです」
福島の件は日本時間9日夕方頃、会議の議題になる予定という。韓国政府には汚染水の危険性を壊れたスピーカーのように喚き散らすのではなく、国際的な場でこの問題をどのように処理すればよいのか具体案を示し、建設的な議論をしてもらいたいものだ。原発を取り巻く問題を抱えているのは福島だけではなく、韓国も含まれている。