しかし、「時すでに遅し」と指摘する著名学者の主張がポータルサイト「新浪網」に掲載され、話題となっている。
中国最高学府・北京大学教授で、人口学が専門の郭志剛氏によると、医療の進歩により中国の人口増加はこのままのスピードで進むと2050年には60歳以上の人口が4億人に達し、全人口に占める割合は35%前後になるという。人口ピラミッドは、完全な逆三角形だ。こうした超高齢化社会は、今頃一人っ子政策を廃止したところで是正されないというのが郭氏の主張だ。
その根拠として、13年に当局が導入した「夫婦のどちらかが一人っ子の場合には、2人まで子供の出産を認める」という「単独二胎」政策の失敗を挙げる。これにより1000万組の夫婦を対象に一人っ子政策が緩和されることとなったが、実際に政府に第二子をもうけるための申請を出した夫婦は150万組で、政府の予想を大きく下回った。
つまり、実際のところ、2人目をもうけようという夫婦はそう多くないとみられるのだ。郭氏は、一人っ子政策の完全撤廃により人口ピラミッドの歪みを是正するためには、100年以上かかるとの見方を示している。
今回の一人っ子政策撤廃について、中国版Twitterともいわれる「微博」には懐疑的な意見が数多く寄せられている。
「いきなり『子供を産んでくれ』って言われても無理な話だ。子供をひとりを育てるのにいくらかかるか、政府はわかっているのか」
「順番が違うだろう。子育ての環境や社会インフラを整えてからでないと、安心して子供を産めない」
「そもそも農村には、出生届を出されていない子供が数億人いるとされている。まずは国内の正確な人口を把握してからでないと、とんでもないことになるんじゃないの?」
それにしても、「増えすぎたから産むな」「減ってきたから産め」という当局は、国民を家畜のように見ているのだろうか。
(文=青山大樹)