一方で、その闘争の後、中核派系と関係がある千葉動労(国鉄千葉動力車労働組合)から、講演討論会の講師に呼ばれた。おそらく私が警察権力と激しく闘う姿を観察し、声をかけてきたのだろう。千葉動労で講演をすると、公安警察はますます私のことを警戒しているようだった。
90年代に入り、私が東京管理職ユニオンをつくり激しく活動をしていたから、公安警察が捜索をするタイミングを見計らっていたのだろう」
警察は結局、設楽氏を逮捕することはできなかった。警察の思惑が設楽氏の指摘する通りなのかどうかはわからない。
東京管理職ユニオンはその後組合員を増やし、勢力を拡大した。家宅捜索から14年がたった今、設楽氏の影響を受けた組合員たちが全国各地にユニオンをつくり、各地で闘争を行っている。
ユニオンが労働界を変える
設楽氏は、70~80年代に活躍した労働組合のリーダーである2人の名を挙げた。全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)や東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)の委員長などを務めた故松崎明氏や日産自動車の労働組合委員長だった故塩路一郎氏である。
「この2人は労働者の心や思いをつかみ、職場権力を握りしめた。そして経営側と厳しく対抗しつつ自らの権力を行使し、経営者と妥協して組織の力を保持する傾向があった。職場権力を握り、組合員の支持をバックに闘う姿勢には断固たるものがあり、恐ろしいほどに強かった。今の時代、こんな労組のリーダーはいない」
そして、こんなことも明かした。
「労働組合・連合のあるベテラン幹部は、大企業の企業内労組のリーダーたちには職場権力を握り、経営側と交渉する発想も意欲もないと嘆いていた。そのひとつが大手の電機メーカーの企業内労組が加盟する電機連合だという」
さらには、日本最大の労組・連合のタブーを語る。
「企業内労組のある幹部は、会社の人事部と結託し、不都合な組合のリーダーを上部の産業別労組である電機連合に追い出してしまう。電機連合には、それぞれの企業内労組から追い出しを受けたリーダーが集まる、と話していた。
電機連合には、企業内から排除されたリーダーが集まり、その中でさらに電機連合にとって不都合なリーダーが現れると、今度は、その上部団体のナショナル・センターに追い出す。つまり、ナショナル・センターは“吹きだまり”が集うところだ。連合推薦ということで民主党公認の国会議員がいるが、あれもそれぞれの産業別労組で追い出しを受けたような人たちなのである。