本稿の趣旨とは離れるが、欧米と比べ、日本の交通事故は歩行者や自転車を巻き込んだ死亡事故が多いのが特徴である 。歩道や歩行者保護設備の未整備などの理由もあるだろう。フランスは歩道や自転車道もしっかり整備されており、街中の狭い道は制限速度が時速30キロで、低速になるようにバンプなどがあり、運転者のマナーも日本より良い気がする。歩行者の多い街の中心は、許可車しか入れないことが多い。実際、歩行者や自転車が巻き込まれる事故件数は少ない。
一方、郊外では一般道でも制限速度は時速80キロである。それでも100キロ近くで走っている車は多いので、車同士の事故は多い。そのため、交通事故死を減らそうとマクロン政権は昨年夏、一般道の制限速度を時速90キロから80キロにしたのだが、地方の住民からは強い反発をかった。一説にはこれが黄色い蛍光ベスト運動につながったという話もある。
日本では、75歳以上の後期高齢者の運転免許保有者数は、07年の283万人からほぼ倍増して、18年は564万人である。男女別でみると男性が71.5%と多数を占める。この増加を見ると、20歳未満が起こす事故の多さより問題視されるのも理解できなくはない。ちなみに日本は、飲酒運転の厳格な取り締まりによって、10万人当たりの交通事故死は国際比較をすると少ない国である。フランスでは、自動車事故による死亡者数は日本の1.4倍である。
高齢者の運転免許更新
さて、ここからが本題だが、75歳以上の高齢者の運転免許更新をどうすべきかを考えてみたい。上記のような社会気運のなかで、高齢者の運転になんらかの制限をかける必要性を政府や警察は認識している。
安全を考えるのであれば、75歳になると一律で通常免許を返納させ、75歳以上向けの新たな免許の取得を義務づけるべきであろう。認知症ではなくても、一般的に高齢になると変化への反応が衰えるため、COMSのようなスピードの出ないミニカー限定免許にするなどの制限免許を設けるべきであろう。安全装置などの技術のみに頼るべきではない。75歳以上の高齢者が、運転することへの当事者意識と責任を自覚することが重要である。しかし、この施策は選挙を考えると自民党にとっては現実的ではなかろう。