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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

店内調理に公共料金受付まで…コンビニ店舗が利益出ず疲弊、その報じられない理由

文=鷲尾香一/ジャーナリスト

 こうした店舗の多機能化が収益に結び付けばよいが、店内での調理にかかる時間や人手、調理のための費用や売れ残り商品の廃棄費用などを差し引けば利益は薄く、加盟店が宅配便の取り扱いや税金などの収納代行から得られる手数料は微々たるものだ。さらには、宅配便で預かった荷物の破損・紛失、収納代行などでの金額ミスは、すべて加盟店の責任というリスクまで抱えている。

 調理から端末の取扱い方法まで多岐にわたるコンビニの仕事は、すべてに対応するのは難しく、それだけに店員を確保するのは困難だ。ベテラン店員が辞めれば、その穴埋めには四苦八苦することになる。結局、求人に対する応募はなく、FC加盟店のオーナーやその家族が長時間仕事をすることになる。それでも利益は減る一方なのだ。

 確かに競合の激化や人件費の高騰、多機能化による仕事の増加に反して、利益幅が薄いことなども利益が減る原因となっているが、実は一番大きな原因は顧客の変化にある。

 1980年代から1990年代にかけて、コンビニの顧客は20代以下が約6割だった。しかし、2000年代から若者層のコンビニ利用は減少し始め、近年では20代以下の利用は約2割にまで低下している。一方で、50代以上の顧客は約1割から約4割にまで増加している。つまり、コンビニの客層は大きく変化したのだ。

 若者層のコンビニ利用が減少すれば、当然のことながら深夜の顧客は減少する。結果、24時間営業というコンビニの錦の御旗は、FC加盟店の経営を圧迫するだけの“悪習”になってしまった。今後、高齢化の進展により、24時間営業の必要性は一段と低下する可能性がある。

 消費行動にも大きな変化がある。インターネット通販の普及やディスカウントストアの普及により、現在の消費者は定価で販売するコンビニよりもインターネット通販やディスカウントストアで商品を購入する。

 未婚化や晩婚化、核家族化、高齢化の影響は、高齢者や単身者の増加につながり、少量の商品が好まれるようになった。量の多い商品は売れず、小分けされた、あるいは少量の商品が売れる。このため、販売個数が増えても、売り上げが増加するわけではなくなっている。

24時間営業取りやめは“両刃の剣”

 こうした経営環境の変化が、コンビニの経営を大きく圧迫しているわけだが、コンビニ業界も対策を進めてはいる。たとえば無人レジの導入などだ。しかし、無人レジはコンビニの主力商品であるタバコや酒類を販売することはできない。有人対応が必要だ。宅配便も取り扱えなければ、ファストフードも扱えない。弁当などの加熱もできない。

 加えて、無人レジは万引きが非常に多い。結局、店員が監視するか、監視カメラを設置するなどの対応が必要になり、今のところ、無人レジは有効な手段とはいえない。

 こうなると、今のところコンビニの経営を改善して、少しでも利益を回復するための手段としては、24時間営業をやめるというのは有効な手段に違いない。だが、深夜帯の営業停止は“両刃の剣”でもある。当然、深夜帯分の売り上げは低下するし、深夜帯の営業を停止したことで客離れが起きる恐れもあるからだ。深夜帯営業の停止が、結果的に利益増加につながり、FC加盟店オーナーなどの過重労働の解消につながればいいのだが。

 まさに、今のコンビニは“前門の虎、後門の狼”という状況にある。

(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

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