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それでも黒田総裁は強気の姿勢を崩さない。「消費者物価が2%上昇するまでは、金融緩和を継続する」と明言し、景気は良くなっているとの姿勢を貫き通している。黒田氏が日銀総裁であることの存在意義は、デフレ経済を脱却し、消費者物価指数の2%上昇を達成するという点にしかないのだから致し方ない。
だが、黒田総裁と庶民が必ずしも同じ感覚とは限らない。景況感や暮らし向きは所得水準や生活環境に大きく影響される。
昨年末にテレビで放送された討論会では、アベノミクス推進派で安倍晋三首相や黒田総裁のシンパといわれる有名な経済学者が、「アベノミクスがうまくいっていないとか、金融緩和の効果が出ていないとか、批判がある。しかし、明らかに景気は良くなっており、企業は人手不足になっている。求人もアベノミクスによって大幅に増加した。非正規雇用ばかりで、正規雇用が増えていないと批判する人もいるが、非正規雇用であろうが働き口があるということを評価しなければいけない」と強弁していた。
根本的に非正規雇用の問題点が理解できていないのだろう。こういった感覚のズレがあるうちは、暮らしにゆとりが出てきたと回答する人が大幅に増加するとは思えない。優良企業あるいは倒産の心配がない政府組織などに勤めて高収入な人々と、非正規労働に携わっている人々とでは、生活感に大きな相違があるのだ。それは、日銀が無作為に抽出したアンケート対象者の回答にも表れている。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
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