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歌舞伎町の客引きは、なぜ1カ月でごっそり入れ替わる?確実にぼったくり店行きの事情

文=星野憲由
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歌舞伎町の客引きは、なぜ1カ月でごっそり入れ替わる?確実にぼったくり店行きの事情の画像1「Thinkstock」より

 春の足音が聞こえる季節になってきた。いわゆる、年度の区切りだ。地方に転勤する人もいれば、就職や進学のために上京する人もいるだろう。

 人の動きがあれば、職場や学校では歓迎会や送別会が開かれる。春の陽気に誘われて夜の繁華街に出れば、甘い言葉をかけてくる客引きが、次から次へと近づいてくる。

 どれも怪しげな内容だが、「もしかしたら、お得なサービスのお店もあるのでは」「誰も知らない、穴場の優良店に出会えるのでは」などという思いも頭をよぎる。

 しかし、そんなことはないと思っていい。客引きについていけば、かなりの高確率でぼったくり店に連れていかれる。なぜ、そこまで言い切れるのか。筆者は1年間、新宿・歌舞伎町に週1回のペースで出かけて、定点観測を行った。その経験から得た、客引きの真実についてお伝えしよう。

1カ月で入れ替わる、若い客引きグループ

 歌舞伎町の客引きは、大きく2種類に分かれる。若い客引きと中高年の客引きだ。

 そして、例外はあるが、なぜか若い客引きはメインストリートにいることが多く、中高年の客引きは、主に路地にひっそりと生息している。そして、彼らを1カ月ほど観察して驚いたことがある。

 メインストリートにいる若い客引きの顔ぶれが、一気に変わったのだ。いつも同じ場所でしつこく声をかけてきた客引きが消え、いつも見かけていた顔が見えない。

 さらに1カ月ほどたつと、また同じことが起きた。そう、彼らは1カ月程度しか歌舞伎町にいないのだ。その背景には、若い客引きグループを管理して、配置のローテーションを行っている組織がありそうだ。

 ためしに、声をかけてきた客引きの数人に、歌舞伎町のとある定食屋について、どの程度知っているか聞いてみた。歌舞伎町で働いたり、遊んだりしていれば、多くの人が知っているであろう有名店だが、ガイドブックやマスコミなどでは、あまり紹介されていない。

 彼らは、誰もその店のことを知らなかった。いかにも歌舞伎町に詳しいような顔をしていながら、実は、彼らは客よりも歌舞伎町のことを知らないのだ。1カ月程度しかいないのだから、それも当然かもしれない。

 しかし、なぜ客引きの顔ぶれが入れ替わるのだろうか。しかも、一斉に。一定の場所に長くいたほうが、街の知識を得られるし、働きやすいはずだ。正直、本当の理由はつかみ切れていないが、想像できることがひとつある。

 警察は、歌舞伎町をパトロールして客引きに注意を与えている。初めて警察に客引き行為が見つかった時、「こういった違法行為は、二度とやらないように」と注意を受けるが、相当悪質なケースでない限り、逮捕されることは少ない。何度も注意されているにもかかわらず従わない場合に、初めて逮捕されるのだ。

 しかし、1カ月限定で客引き行為をしている場合は、どうだろう。そんな短期間のうちに、何度も警察に見つかる確率はかなり低い。警察が注意をしても、常に「初犯の注意」で終わり、そのまま別の地域に転勤してしまうことになる。

 つまり、移動を繰り返すことで、逮捕されることなく、安全に客引き行為を行うことができるわけだ。

客引きとぼったくり店が通じている仕組み

 客引きについて、歌舞伎町の老舗風俗店の店長に聞くと、以下の答えが返ってきた。

「同業者にも客引きと契約している店はありますが、昔からここで商売をしている店の多くは契約していません。風俗店の客引き行為は、風営法違反だからです。これは、真面目・不真面目といったレベルの話ではないんです。

 東京オリンピック開催が近づく中、規模の大小は別として、都内の風俗店の一斉摘発が行われるでしょう。それをわかっていながら、警察が捕まえやすい尻尾を見せびらかして営業するのは利口じゃない。

 つまり、客引きと契約する店は摘発されることを覚悟していて、最初から長く営業するつもりがないんでしょうね。当然、歌舞伎町に出店するには、相応のお金がかかります。それを『短期間で回収できる』と踏んでいる店ということになるため、ぼったくりでもしないと無理なんじゃないですか」

 まっとうな風俗店からすれば、最近の客引きは目の上のたんこぶであり、一掃されることすら願っているという。彼らがいなくなれば、ぼったくり店や違法店に流れる客の数は減る。その分、まっとうに商売をしている店に足を運ぶ確率が上がるからだ。どうやら、最近の客引きは、客からも、同業者からも煙たがられる存在のようだ。

 これらの情報を総合すると、若い客引きグループは歌舞伎町の店のことをあまり知らないため、紹介できるのは契約を結んでいる店しかないということになる。

 しかも、「危ない橋を渡ってでも、短期間に大きく稼ぎたい」と企んでいる店しか紹介できない。つまり、ぼったくり店だ。だから、「彼らについていくと、確実にぼったくり店に連れていかれる」という仕組みになっている。

 また、中高年の客引きについても軽く触れておこう。

 彼らの多くは、長年、歌舞伎町一筋で働いていて、客引きとして顧客を抱えている。電話番号やメールアドレスを交換し、新店情報などを発信している。つまり、意外にも、客引きの中には信頼を大切にしている人もいるのだ。

 実際、そういう客引きは、客が少ないことが明らかな台風や雪の日でも、いつもの場所に立っている真面目さがある。とはいえ、不景気のあおりを受けて、時には小遣い稼ぎのためにぼったくり店を紹介することもあるため、ベテランだからといって安易についていくのもおすすめできない。彼らを信用するのであれば、ある程度の顔見知りになってからがいいだろう。

 そもそも、これだけ情報があふれている時代だけに、自身でつかんだ信頼の置ける情報を元に遊ぶのが、一番安全といえるだろう。

しつこい客引きの撃退法

 蛇足ながら、しつこい客引き対策を教えよう。客引きのほとんどは、その街を管理する暴力団に一種の「出店料」を払って、道に立っている。出店エリアは、だいたい「十字路から、次の十字路まで」と決まっている。

 つまり、しつこくついてくる客引きも、交差点を越えればついてこられないのだ。いわゆる“よそのシマ”で商売をするのはご法度である。もし、交差点を越えてもついてくるようなら、背景には、歌舞伎町のルールを守らない勢力の暴力団がいる可能性が高い。そのあたりに関わると、かなり厄介なことになるので、注意しよう。

 また、きれいな女の子の写真を自慢げに見せてくる場合は、その店のホームページについて聞いてみよう。「ホームページは、まだできていない」と言ってきたり、簡易的で安っぽいものしかなかったりする場合は注意したい。

 このご時世、ルックスのいい女の子を集めるのも、きれいに撮影するのもお金がかかるはずだ。それにもかかわらず、店の顔となるホームページにお金をかけていないというのは、あり得ない話だ。信用するべきではないだろう。
(文=星野憲由)

星野憲由

星野憲由

雑誌編集者を経験後、フリーのライターに。WEB媒体がメインであるが、紙媒体でも執筆。

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