河井案里・克行議員、秘書に責任押し付け永田町で非難の嵐…捜査の手が伸びない理由
国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
3月3日のひな祭りの日の朝、衆議院第二議員会館と参議院議員会館のすべての出入り口前に大勢のマスコミ関係者が詰めかけていました。それが、河井克行衆議院議員と河井案里参議院議員の事務所の強制捜査の様子を撮影するためなのは、前夜から流れていた「強制捜査の見込み」という報道から想像できました。
その時点ですでに秘書の逮捕説は出ていたのですが、神澤は半信半疑でした。克行議員の政策秘書の高谷氏は優秀で性格がいいし、お子さんもいらっしゃるので、逮捕まではないと考えていたのです。一方で、強制捜査の噂が出ていた頃から「今回は『上』まではいかないらしい」という話もあり、それが事実なら許せないとも思っていました。
「上まではいかない」というのは、秘書がすべての責任を押し付けられ、河井夫妻は逮捕されないということです。気づけば、永田町には「検察と安倍政権が取引したらしい」という情報も広がっていました。
河井夫妻は元大阪地検検事正の小林敬弁護士ら“ヤメ検”の弁護士を何人も雇っていましたが、最近は定年延長で問題になっている東京高検の黒川弘務検事長と関係のある、別のヤメ検に代えたようです。そして、克之議員が「これで安倍総理が私を守ってくれる」と周囲に言っているという話もあるほどです。
私たち秘書は「トカゲのしっぽ切りなんてあり得ない! もし高谷さんたちが捕まったら、洗いざらい本当のことを言うべきだよね!」と憤っていましたが、残念なことに、高谷氏、案里議員の公設秘書、選挙スタッフの3人が公職選挙法違反の容疑で広島地検に逮捕されてしまいました。
現時点で認否は明らかにされていませんが、彼らは圧力に負けずに詳細に説明して、がんばってほしいです。国会女子たちは、みんな応援していますよ。
河井夫妻は“人望のなさ”を露呈か
このような秘書たちの「応援ムード」は、以前の永田町では考えられませんでしたね。秘書たるもの、「たとえ『黒』でも、議員が『白』と言えば『白』と言う」といった忠誠心が昔は当たり前だったからです。
2009年の同じく3月3日、当時の小沢一郎衆議院議員の秘書たちが逮捕された「西松建設事件」がありました。準大手ゼネコンの西松建設が小沢議員のほか、自民党の二階俊博衆議院議員など多くの国会議員に不正献金をしていたという疑惑です。
その日、小沢グループの議員の秘書たちは桜餅を用意して議員の帰りを待っていたそうですが、ひな祭りどころではありませんでした。小沢議員の私設事務所に強制捜査が入って秘書たちが逮捕され、グループの議員たちも捜査の立ち会いのために深夜まで帰れなくなっていたのです。議員会館内事務所の捜索はありませんでしたが、大騒ぎでした。
この件で複数の秘書が逮捕されたり事情聴取を受けたりしたのですが、いずれも一切疑惑を認めませんでした。小沢グループの秘書たちは、忠誠心にかけてはピカイチなのです。「小沢の指示」とは絶対に認めないので、拘留期間が長期にわたった秘書もいました。
結果的に、小沢議員は逮捕されることはありませんでした。数人の秘書が逮捕されて有罪判決を受けていますが、裁判中にボスの悪口をもらしたり、「本当はボスに指示を受けていたんだよね」などと言ったりする秘書は1人もいませんでした。
こうなると、「なんのための捜査だったの?」と言われても仕方ありません。もともとたいした証拠はなく、「秘書を逮捕してシメれば何か出るだろう」的な見込み捜査だったのでしょう。忠誠心というか、秘書たちは検察の狙いがボスであることを最初から理解していて、理不尽な捜査からボスを守るためにがんばったのだと思います。
河井夫妻の問題については、秘書らの逮捕後に、複数の陣営関係者が広島地検の任意聴取に対して「選挙の責任者は克行氏」という趣旨の証言をしたことが報じられ、克行議員がスタッフに細かい指示を出しているLINEの画像も流出しています。逮捕された3人が、ウグイス嬢の買収が河井夫妻の指示であったことを認めるのも時間の問題でしょう。これは、時代が変わったというよりも「河井夫妻がいかに人望がないか」が露呈することになると言えるのかもしれませんね。
小沢議員と河井夫妻の違いは、秘書との信頼関係でしょう。小沢グループの秘書たちは「万が一、自分の職がなくなっても、小沢先生は必ず面倒を見てくれる」「ねぎらってくれる」と信じ、日頃からとても小沢議員に感謝しているように見えました。そんな信頼関係を構築できなかった河井夫妻は、いったいどのような末路をたどるのでしょうか。
(文=神澤志万/国会議員秘書)
『国会女子の忖度日記:議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』 あの自民党女性議員の「このハゲーーッ!!」どころじゃない。ブラック企業も驚く労働環境にいる国会議員秘書の叫びを聞いて下さい。議員の傲慢、セクハラ、後援者の仰天陳情、議員のスキャンダル潰し、命懸けの選挙の裏、お局秘書のイジメ……知られざる仕事内容から苦境の数々まで20年以上永田町で働く現役女性政策秘書が書きました。人間関係の厳戒地帯で生き抜いてきた処世術は一般にも使えるはず。全編4コマまんが付き、辛さがよくわかります。