数年前から空き家問題が指摘されるようになり、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行された昨年は「空き家対策元年」といわれるが、所有者がわからない土地も増えている。災害復旧や耕作放棄地の解消、空き家対策などを進めるうえで、現実的な障害になっている。
たとえば、宮城と岩手では、東日本大震災の津波で被害を受けた宅地を自治体が買い取る事業を行っているが、相続人の全員と連絡が取れないなどの理由で今も買い取りが進んでいない土地があり、買い取り対象全体の17%にも上る。なお、土地の「所有者不明化」に法的な定義はないが、所有者の居所や生死がただちに判明しないケースがこう呼ばれている。
外交や経済等で政策研究・提言を行うシンクタンク、公益財団法人東京財団はこのほど、土地の「所有者不明化」に関して行ったアンケート調査結果をまとめた(回答率52%、888自治体)。アンケートの対象は、土地所有者(納税義務者)から固定資産税を徴収している全国自治体の税務担当者。
その結果によれば、「土地の所有者が特定できず問題が発生したことがあるか」との質問に対して、557自治体(63%)が「ある」と回答している。具体的な問題として「固定資産税の徴収が難しくなった」「老朽化した空き家の危険家屋化」「土地が放置され、荒廃が進んだ」などが挙げられた。
では、なぜ所有者不明の土地が生まれるのだろうか。
日本には現状、不動産登記簿、国土利用計画法に基づく売買届出、固定資産課税台帳、農地基本台帳など、目的別に各種台帳はあるものの、土地の所有・利用を国が一元的に把握できる仕組みはない。たとえば、不動産登記は任意であり、登記後に所有者が引っ越しした場合でも住所変更の義務はない。固定資産課税台帳上の所有者情報は、法務局から届く不動産登記情報に基づいて、自治体が更新する。
死亡者課税
所有者不明になってしまう大きな原因のひとつとして考えられるのは、土地の所有者が相続登記をせず、死亡者名義のまま放置しているパターンだ。土地・家屋の所有者が死亡した場合、本来は(1)相続登記を済ませてもらって相続人に納税義務者を変更する、あるいは(2)相続登記が行われない場合は相続人調査を行い法定相続人の共有名義に納税義務者を変更する、などの手続きを行う。