【新型コロナ】マスク品薄“便乗”詐欺の被害者続出…「無料配布」うたう悪質な手口
新型コロナウイルスの感染拡大で品薄状態が続くマスクに関係した詐欺が止まらない。政府は15日以降に取得価格を超える値段での転売を禁じたが、無料配布と称して詐欺サイトに誘導したりする手口がまだ横行している。
先月から今月前半ごろにかけて、マスクが25枚入りで数万円するケースが出るなど、高額転売が後を絶たなかった。業を煮やした政府の規制により、ヤフーオークションやメルカリなどでも高額転売を禁止することが決まったため、一時期よりは目にする機会は減った感がある。しかし、マスクの品薄状態が解消されるにはまだ時間がかかるため、便乗する手合いはより巧妙な形で詐欺を続けている。
「国民健康センター」などと名乗り、「マスクを無料で配布します」などというメールを無差別に送り、詐欺サイトに誘導し個人情報を引き出したりするほか、群馬県や大阪府では水道管に「コロナウイルスが付いている」と持ち掛け、除去費用を要求する手口などが確認されている。
詐欺犯が流行を利用するのは基本的な手法だ。例えば、今年1月にZOZO創業者の前澤友作氏が1000人に100万円のお年玉を配るという企画を突然始めた際、前澤氏本人やスタッフを名乗る人物から「当選しました」と書かれた偽ダイレクトメールがツイッターに届くという事案が多数発生した。これもマスクの無料配布と同様、詐欺サイトに誘導するというものだが、普段引っかからないような人でも前澤氏の企画を知った上では警戒心も緩んでしまうというところだろう。ヤクザなど裏社会取材歴の長いライター氏によると「基本的には『流行りもの』『話題もの』に絡んだウマい話には警戒すべきだ」と強調する。
「詐欺の基本は、混乱に乗じること、盲点を突くことです。詐欺師は知能犯ですから、ツイッターのトレンドやニュースもしっかり読んで、世間がどういうことに関心があるか、弱点を常に分析しているんです。そして、時期が来たら短期集中で動いて、それまでの裏人脈を使って回収する。前澤氏の件は裏社会では『1億円出してくれたおかげで、詐欺師が10億円稼いだ』と感謝される始末です。今回のマスクの品薄も現金プレゼントもそうですが、人間は非日常のことがあると判断力が鈍るので気を付けないと危ない」
今回の新型コロナウイルスをめぐっては、何の科学的根拠がないのにもかかわらず、トイレットペーパーの買い占めが相次ぎ、マスクと同様、品薄が続いている。不安が募る状況では、冷静でいられる人間のほうが少ないということなのだろう。普段から自分はむしろ騙されやすいと思っておくくらいのほうが、深刻な詐欺被害に遭わないようにできるのかもしれない。
(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)